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学問の上で大いに忌むべきは、したり止めたりである。したり止めたりであれば、ついに成就することはない。

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血液学 39 小児の貧血

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Chapter 39 小児の貧血

典拠: 三輪 - 血液病学 2版 [50, p.1393]

鉄欠乏性貧血

遺伝性球状赤血球症

赤血球膜の骨格タンパクであるアンキリンやスペクトリンの異常により、赤血球の円盤様構造が失われて球状を呈し、脾臓によって溶血をきたす。

小児の再生不良性貧血 aplastic anemia

小児の特発性血小板減少性紫斑病 idiopathic thrombocytopenic purpura, ITP

  • ウイルス感染後に発生しやすい
  • 頭蓋内出血を起こしやすい

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血液学 目次 X 小児の血液疾患

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Part X 小児の血液疾患

典拠: 三輪 - 血液病学 2版 [50, p.1385]

X 小児の血液疾患

38 小児の正常血液
39 小児の貧血


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血液学 37 血小板異常の疾患

→ 血液学 目次

Chapter 37 血小板異常の疾患

典拠:エッセンシャル血液病学 [53, p.344] ,
典拠:医学生・研修医のための血液病学 [45, p.226] ,
典拠: 病理学 [42, p.472]

血小板減少症

  • 特発性血小板減少性紫斑病 ITP
  • 血栓性血小板減少性紫斑病 thrombotic thrombocytopenic purpura, TTP
  • 汎血球減少によるもの
    • 再生不良性貧血
    • 急性白血病

血小板増多

  • CML
  • 真性多血症
  • 本体性血小板血症

血小板の機能異常

  • Bernard-soulier 症候群:粘着異常
  • 血小板無力症 : 凝集異常
  • 放出反応の異常
    • Storage pool 病:顆粒異常

出血性素因

  • 血管紫斑病 purpura
    • Ehlers-Danlos 症候群
    • Osler 病
  • 凝固異常によるもの
    • 血友病
    • vWD

37.1 血小板減少症 thrombocytopenia

典拠: 検査のポイント [46, p.126] ,
典拠: MorningReport [26, p.263] ,
典拠:病理学 [42, p.472] ,
典拠: エッセンシャル血液病学 5 版 [54, p.222]

概念

血小板の減少を来たす疾患をいう。血小板だけ減少しても出血傾向により紫斑や月経過多などの症状を呈するが、凝固系には異常が見られない。

分類

  • 先天性
    • 新生児同種血小板減少性紫斑病 neonatal alloimmune thrombocytopenia , NAITP
    • Bernard-Soulier syndrome
    • Wiskott-Aldrich 症候群
      血小板減少・湿疹・易感染性を三徴とする免疫不全症で、X 染色体劣性遺伝病である。
    • Alport 症候群,Fechtner 症候群
  • 後天性
    • 特発性血小板減少性紫斑病 idiopathic thrombocytopenic purpura, ITP
    • Kasabach-Merritt 症候群
      肝血管腫が巨大な場合に腫瘍内に血栓を形成して DIC を招いたもの。
    • SLE

原因

  • 血小板産生の減少によるもの
    • 再生不良性貧血
    • 白血病
    • 免疫抑制剤
    • 葉酸欠乏
  • 血小板破壊の亢進によるもの
    • 非免疫的機序によるもの
      • DIC
      • 血栓性血小板減少性紫斑病
        免疫的機序によらずに全身の細小血管に血栓が多発し、血小板が消費されるために血小板減少を来たす疾患である。
    • 免疫的機序によるもの
      • 薬剤性
      • 特発性血小板減少性紫斑病
        後天的に血小板に対する自己抗体が出現し、血小板減少症によって紫斑を呈したもの。
    • 脾機能亢進によるもの
      • 肝硬変
        脾機能亢進によって汎血球減少症をきたし、特に血小板が顕 著に減少する。
  • 測定の誤りによるもの
    • 偽性血小板減少症

病態生理

そもそも血小板は血管内皮が損傷されると損傷部位に粘着・凝集して一次止血血栓形成を行なう。したがって血小板が減少すると一次止血血栓形成が進行せず、血液が組織に漏出して紫斑を呈する。

症状

  • 紫斑
    皮膚や粘膜の点状出血となる。

37.1.1 特発性血小板減少性紫斑病 idiopathic thrombocytopenic purpura,autoimmune thrombocytopenic purpura ITP,AITP

典拠:エッセンシャル血液病学 5 版 [54, p.230] ,
典拠:医学生・研修医のための血液病学 [45, p.226] ,
典拠:Harrison11 [7, p.1472] ,
典拠:標準皮膚科学 5 版 [62, p.153] ,
典拠:Nelson:Pediatrics.16ed [5, p.1520] ,
典拠:最新内科学大全:血小板・凝固・線溶異常 [38, p.70] ,
典拠:血液細胞アトラス 4 版 [65, p.261]

概念

風疹などの感染を契機として後天的に血小板に対する自己抗体が出現し、血小板減少症によって紫斑を呈したもの。

病型

  • 急性特発性血小板減少性紫斑病
    小児に多く、風疹などのウイルス感染のさいに急激に出血症状を呈した後に自然治癒する。だたしまれに頭蓋内出血、特にクモ膜下出血を起こして重症化することがある。
  • 慢性特発性血小板減少性紫斑病
    半年以上にわたって症状が持続するもので、成人女性にやや多い。

病態生理

ウイルス感染のさいに B リンパ球が活性化され、血小板に対する自己抗体を産生し始める。血小板と結合した抗体の Fc 部分を脾臓のマクロファージが認識し、これを貪食することによって血小板破壊を来たす、と考えられている。

症状

  • 出血傾向
    • 紫斑
      皮膚や粘膜の点状出血および斑状出血であり、圧迫によって消退しない。
    • 鼻出血
    • 頭蓋内出血を起こしやすい
  • 脾腫の欠如
    抗体と結合した血小板は脾臓で破壊されるにもかからわず、不思議なことに ITP では脾腫を欠く。脾腫があれば脾機能亢進による血小板の減少を考えるべき。

検査所見

  • 血小板減少症 thrombocytopenia
    赤血球系、白血球系には異常を認めず、ただ血小板のみが減少する点が特徴的である。
  • PAIgG 高値
    抗血小板抗体である血小板関連免疫グロブリン G platelet associated IgG, PAIgG が増加する。ただし本検査は非常に鋭敏であるから、SLE などの膠原病をはじめ MDS などでも陽性となることがあり、その意味合いは補助的な検査に留まる。
  • MPV 高値
    血小板寿命の短縮を示唆する。

病理所見

  • 骨髄所見
    骨髄では未熟な巨核球の増加が見られるのが特徴である。血小板産生 の回転が亢進している所見である。

治療

急性特発性血小板減少性紫斑病は半年以内に自然寛解することがほとんどであるため、出血傾向が軽度であれば経過観察で十分である。出血傾向が強い症例に対しては血小板数が 5 万程度にまで回復するのを目標に治療を開始する。

  • 免疫抑制剤
    エンドキサンなどの抗癌剤を流用するので利用には注意を要する。
    • ステロイド剤
      本症の第 1 選択であり、プレドニンを投与して B 細胞の抗体産生能を抑制する。
  • γグロブリン大量療法, IgG 大量投与
    IgG の Fc 部が網内系細胞の Fc 受容体をブロックし、その血小板貪食作用を抑制する。
  • 摘脾
    脾腫はないものの脾臓が血小板破壊の場になっているため摘脾は有効である。慢性でステロイド療法が無効な場合でかつ、免疫系がある程度完成した 5 歳以上の症例が適応となる。なお摘脾後は肺炎球菌などに対する感染が生じやすくなる。
  • 血小板輸血
    血小板の破壊が亢進しているため一時的な止血効果しかなく、原則として適応はない。

37.1.2 血栓性血小板減少性紫斑病 thrombotic thrombocytopenic purpura, TTP

典拠:病態生理できった内科学:血液疾患 2 版 [47, p.203] ,
典拠:NIM 血液病学 4 版 [48, p.278] ,
典拠: 最新内科学大全:血小板・凝固・線溶異常 [38, p.101] ,
典拠: Harrison13 [8, p.1320] ,
典拠: エッセンシャル血液病学 5 版 [54, p.234]

概念

免疫的機序によらずに全身の細小血管に血栓が多発し、血小板が消費され て血小板減少を来たす疾患である。症状は溶血性尿毒症症候群 HUS に類似するが、両者は病態生理の観点から全く異なった疾患であることが判明した。
DIC との鑑別が臨床上重要である。

原因

最近の知見では vWF のプロテアーゼの減少もしくは異常によって vWF の 機能が亢進し、多発した血栓が微小血管の血管内皮細胞を障害すると考えられている。

  • 腸管出血性大腸菌 O157 感染症
  • チクロピジン ticlopidine

病態生理

  • 一次止血機構の亢進
    もともとフォン・ウィルブランド因子 vWF は血小板の粘着を誘導する作用を持ち、一次止血血栓形成において重要な役割を担う。本症ではこの分解酵素の活性低下により vWF が活性化され、本来ならば止血が起こるべきでない場所にも血小板凝集が促進されて血栓を多発する。
    • 血栓症
      血栓が腎血管に蓄積すると溶血性尿毒症症候群を合併する。
  • 赤血球破砕症候群
    微小血栓形成により血管内皮が障害されると機械的機序により赤血球 が崩壊して血管内溶血を来たす。
    • 溶血性貧血
  • 凝固線溶系の異常はない
    DIC との鑑別に重要である。

症状

  • 紫斑
  • 溶血性貧血
  • 神経症状
    脳血栓によって、頭痛・意識障害・知覚障害など多彩な症状を呈する。
  • 腎障害

検査所見

  • 血小板減少
  • 末梢血所見
    • 分裂赤血球, 破砕赤血球 schistocyte
  • vWF の異常

なお凝固能に異常はないので、PT や APTT などの凝固時間は正常である。

合併症

  • 溶血性尿毒症症候群 hemolytic uremic syndrome , HUS
    病理機序は血栓性血小板減少性紫斑病とほぼ同じであると考えられているが、特に腎障害が強い。大腸菌が産生するベロ毒素が乳幼児の腎血管内皮に豊富に存在する受容体に結合して内皮細胞を傷害し、血栓形成を促進する。血小板の血栓が腎血管に蓄積し、血小板減少を来たす。
  • 膠原病
    SLE や全身性進行性硬化症など、血管炎を伴なう膠原病に合併しやすい。

治療

  • 血漿交換療法
    機序は不明だが本症に奏効する。
  • 新鮮血漿輸注療法

37.1.3 Kasabach-Merritt 症候群

典拠:病態生理できった小児科学 [41, p.258] ,
典拠:Beck:Hematology [1, p.560] ,
典拠: Nelson:Pediatrics.16ed [5, p.1522,p.1977] ,
典拠: NIM 血液病学 4 版 [48, p.534]

概念

血管腫が巨大な場合に腫瘍内に血栓を形成して DIC を招いたもの。血小板の寿命を短縮して血小板減少症を招く。

病態生理

腫瘍内の巨大な血栓のためにフィブリノーゲンや血小板が消費され、赤血球が破壊されて DIC となる。

症状

通常は出生時より巨大で単発の血管腫が見られ、臨床症状は乳児期に明らかとなることが多い。

  • 血管腫
    ほとんどの場合で血管腫は皮下にあって体表から視認できるが、稀に 腹腔内に潜んでいることがある。
  • 出血傾向
  • 貧血

37.1.4 偽性血小板減少症 pseudothrombocytopenia

典拠: エッセンシャル血液病学 5 版 [54, p.236]

概念

自動血球計数器で血小板数を計測する際に、採血時に添加された抗凝固剤 EDTA の作用によって血小板凝集が生じたために、見かけ上血小板が少なく算定される現象である。
塗沫標本にて血小板を計測すれば正しい血小板数を得ることができる。

検査所見

  • 塗沫標本
    凝集した血小板が認められる。

37.2 血小板機能異常症

血小板の構造

  • 膜タンパク
    • GPIb
    • GPIIb/IIIa
  • 顆粒
    • dense granule
      ADP,Ca++ ,serotonin を含む。
    • α-granule
      β-thromboglobulin, platelet-derived growth factor, fibrinogen, V 因子, vWF, thrombospondin, fibronectin などを含む。
  • 小管 canaliculi

37.2.1 Bernard-soulier 症候群, BSS

典拠:Beck:Hematology [1, p.571] ,
典拠:図説分子病態学 [40, p.275] ,
典拠:最新内科学大系:血小板・凝固・線溶異常 [38, p.107] ,
典拠: エッセンシャル血液病学 5 版 [54, p.237]

概念

血小板の膜表面に GPIb/IX が欠乏する常染色体劣性遺伝病である。血小板の粘着反応が障害され、一次止血機構の不全により出血傾向を呈する。

病態生理

血小板は、vWF が GPIb とコラーゲンとの双方に結合することによって血管内皮に粘着するので、GPIb の欠乏は血小板粘着異常をもたらす。

症状

中程度の出血傾向を呈する。

検査所見

  • 出血時間の著明な延長
  • リストセチン血小板凝集 Ristocetin,RIPA にて血小板凝集が欠如する
    所見自体は vWD と同様だが、本症は血小板の膜タンパク自体の問題であるため、正常血漿の添加によって補正されることがない点が vWDと異なる。

病理所見

  • 抹消血塗抹標本
    • 巨大血小板 giant platelet の出現

37.2.2 血小板無力症,Glanzmann 病 thrombasthenia

典拠:病態生理できった内科学:血液疾患 2 版 [47, p.183] ,
典拠: 図説分子病態学 [40, p.277] ,
典拠:最新内科学大系:血小板・凝固・線溶異常 [38, p.115] ,
典拠:エッセンシャル血液病学 5 版 [54, p.238]

概念

先天的な血小板の凝集不全である。
先天的な GPIIb/IIIa 複合体の量的あるいは質的異常のため、血小板の凝集反応が障害され、出血傾向に陥る常染色体劣性遺伝病である。

病態生理

  • GPIIb/IIIa 複合体の生理作用
    正常な血小板がADP やトロンビンなどによって活性化されるとGPIIb/IIIa 複合体は構造変化を起こし、血小板のフィブリノーゲンとの結合部位を露出させるので、血小板どうしがフィブリノーゲンによって架橋されて互いに凝集する。
  • 血小板凝集不全
    本症では GPIIb/IIIa 複合体の量的あるいは質的異常のため、コラーゲンに対する血小板凝集能が低下する。

原因

CD41 の異常に起因する。

検査所見

血小板数は正常だが出血時間は著明に延長する。

  • ADP やトロンビンで刺激しても血小板凝集が陰性となる
  • リストセチン血小板凝集は正常である

治療

血小板輸血を行なう以外に治療法はない。

37.2.3 Storage pool 病

典拠:HematologyNMS [2, p.216] ,
典拠:最新内科学大系:血小板・凝固・線溶異常 [38, p.121]

概念

顆粒の不足による血小板の異常。放出異常を呈する。

種類

  • δ storage pool disease
    dense granule の不足。
  • α storage pool disease
    α顆粒の不足。

分類

  • 先天性
    • Hermanski-Pudlak 症候群
  • 後天性
    体外循環で血小板中の顆粒が放出される。

37.3 血管紫斑病 purpura

種類

  • Ehlers-Danlos 症候群
  • Osler 病

37.3.1 Ehlers-Danlos 症候群

典拠:Harrison11 [7, p.1685] ,
典拠:Harper [27, p.670] ,
典拠:新病理学各論 [44, p.577, p.701]

概念

膠原線維の形成異常による結合組織疾患。

分類

  • I 型
  • II 型
  • III 型
  • IV 型
    特に脳動脈瘤を形成しやすい。

症状

  • 易出血性
  • 皮膚の過伸展
  • 関節の過度の可動性

37.3.2 Osler 病, 遺伝性出血性抹消血管拡張症 Osler-Weber-Rendu disease, herediary hemorrhagic telangiectasia

典拠:MorningReport [26, p.40] ,
典拠:NIM 血液病学 4 版 [48, p.284] ,
典拠:Nelson: Pediatrics.16ed [5, p.1978]

概念

遺伝性の皮膚粘膜の多発性毛細血管拡張症である。拡張した毛細血管は容易に破綻する。

原因

常染色体優性遺伝の遺伝性疾患である。責任遺伝子は 9 番染色体にあり、 endoglin タンパクをコードしている。このタンパクは TGF-β受容体に関係している。

症状

  • 鼻出血
    しばしば初発症状となる。
  • 毛細血管拡張症
    口唇をはじめ舌や手にも好発する。
  • 呼吸器症状
    肺動静脈瘻によってシャントをきたすと、低酸素血症から呼吸困難やチアノーゼを呈する。

検査所見

  • 内視鏡
    消化管粘膜にクモ状血管腫を認めることがある。

合併症

  • 動静脈瘻 AVM
    肺動静脈瘻をはじめ、消化管や脳動静脈奇形などを呈する。
  • 脳膿瘍
  • 消化管出血
  • 片頭痛

37.4 血小板増多症, 血小板増加症 thrombocytosis

典拠:最新内科学大系:血小板・凝固・線溶異常 [38, p.148] ,
典拠:血液内科学 1 版 [59, p.364] ,
典拠: エッセンシャル血液病学 5 版 [54, p.236]

概念

血小板数が 40 万個/μ L 以上を血小板増多症という。血小板産生の亢進もしくは脾臓プールからの流出増加に起因するが、前者が多い。

原因

  • 原発性
    骨髄での血小板産生の亢進によるもので、異常クローンが増植する。
    • 本態性血小板増多症
    • 真性多血症
    • 慢性骨髄性白血病
    • 骨髄線維症
  • 二次性, 反応性
    • 慢性炎症
      炎症過程において産生された IL-6 が血小板産生を促進する。
      • 血管炎 川崎病など。
      • 悪性腫瘍
      • 重症感染症
    • 慢性貧血
      慢性的な貧血に対する反応性の血小板の増加である。
    • 脾摘後
    • 生理的血小板増加症
      運動後や排卵後には一過性に血小板が増加する。

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典拠:新病理学各論

病理学は伝統的に形態学を主な手段としてきたが、決してそれのみではない。その研究にはさまざまな方法論が駆使され、綜合されて、疾病の機序が追求される。その成果は疾患の診断、治療に応用される。ここ十年余りの間に病理学は次元の異なる2つの道をまっしぐらに進んでいるように見える。一つは病理形態学で臨床診断に実用上の価値が高い。進んだ方法論を取り入れて非常に進歩した。もう一つは分子病理学で、遺伝子技術の進歩により疾患の成立機序の解明に驚くべき威力を示している。疾患の成因のかなりの部分は遺伝子で説明がつくこととなった。第13版では、この一見かけ離れているようにとれる病理学の二つの面を如何に融合するかに意が注がれた。急速な医学、生物学の進歩に伴う厖大な情報、新知見の累積を整理し、複雑な生命現象のからくりの理解のために、オリジナルの図、表を工夫。項目が取捨され、内容が書き改められた。

血液学 36 線溶系 fibrinolysis とその異常

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Chapter 36 線溶系 fibrinolysis とその異常

典拠:Beck:Hematology [1, p.526] ,
典拠:分子病理学 [58, p.78] ,
典拠: 標準生理学 4版 [75, p.454] ,
典拠:標準分子医化学 [67, p.872] ,
典拠:Ganong17 [18, p.495]

線溶系の生理

  • 活性系

Figure 36.1:線溶系

f:id:shantipapa:20160421073603j:plain

1 組織プラスミノーゲンアクチベーター tPA がプラスミノーゲンに作用する
プラスミノーゲンアクチベーターには

  • tPA
  • ウロキナーゼ
    尿中の血栓を溶解する作用を持つ。
  • ストレプトキナーゼ がある。

2 プラスミノーゲンはセリンプロテアーゼであり、活性化されると切断されてプラスミン plasmin を生じる

3 プラスミンは安定化フィブリン重合体を切断してフィブリン分解産物 FDP にする

  • 阻害系
    • plasminogen inhibitor 1 ,PAI-1
      血管内皮や肝臓で後活性型として放出される。活性型のPA が PAI- 1 のペプチド結合を切断すると、切断された PAI-1 と PA との間で共有結合を形成し、PA が不活性化される。
      • α 2-plasmin inhibitor
      • α 2-マクログロブリン α 2-macroglobulin

検査所見

  • フィブリン分解物
  • plasmin inhibitor
  • プラスミン-α 2-PI 複合体
  • D ダイマー D-dimer
    XIII 因子が作用したあとの不溶性フィブリンにプラスミンが作用して生じるフィブリンの断片であり、二次線維素溶解の指標となる。
  • アンチトロンビン III antithrombin III, ATIII

線溶系の異常

  • tPA の異常が考えられるが、この酵素は生存に不可欠なため、完全欠損症は見いだされていない
  • プラスミノーゲンの異常
  • PAI-1 欠損症 先天的に PAI-1 の産生が低下しているために過剰なプラスミノーゲン 活性化を抑止できず、早期に血栓が溶解されて出血傾向を呈する。

36.1 PAI-1 欠損症

典拠: 図説分子病態学 [40, p.287]

概念

先天的に PAI-1 の産生が低下しているために過剰なプラスミノーゲン活性化を抑止できず、早期に血栓が溶解されて出血傾向を呈する。


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血液学 35 血栓性疾患

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Chapter 35 血栓性疾患

典拠: 医学生・研修医のための血液病学 [45, p.217]

定義

原因

血栓症の分類

  • 先天性血栓性疾患
  • 後天性血栓性疾患

35.1 先天性血栓性疾患

35.1.1 凝固阻止系とその異常

典拠:Beck:Hematology [1, p.596] ,
典拠:HematologyNMS [2, p.241] ,
典拠:標準生理学 [74, p.455]

凝固阻止系

  • 生理的凝固阻止因子
    • プロテイン C protein C
      抗凝固作用を持ったビタミン K 依存性タンパク。トロンビンおよび血管内皮細胞に存在するトロンボモジュリンの作用によって活性化され、プロテイン S と結合してタンパク分解を行なう。
      • Va 因子や VIIIa 因子を不活化して凝固系を阻害する。
      • PAI-1 が tPA を不活化するのを阻害し、線溶系を促進する。
    • プロテイン S
      活性型プロテイン C に結合し、凝固系の VIII 因子および V 因子を分解し、その作用を失活させる。
    • アンチトロンビン III antithrombin III
      トロンビンや凝固カスケードで働く他のセリンプロテアーゼの活 性を阻害する。特に Xa 因子ならびにトロンビンを中和する。ヘパリンとともに働くと効果が激増する。
  • 後天的凝固阻止因子
    • 抗凝固阻止抗体
      先天性凝固異常症に対して欠損因子を補充した療法のあとに出現する抗体。補充した因子の活性を阻害する。

凝固阻止系の異常

  • 先天性アンチトロンビン III 欠乏症
  • 先天性プロテイン S 異常症 protein-S deficiency
  • 先天性プロテイン C 異常症 protein-C deficiency

アンチトロンビン III antithrombin III,ATIII

典拠: 病態生理できった内科学:血液疾患 2 版 [47, p.177]

概念

代表的な凝固阻止因子であり、肝臓が合成の場となる。トロンビンや凝固 カスケードで働く他のセリンプロテアーゼの活性を阻害する。特にXa 因子 ならびにトロンビンを中和する。ヘパリンとともに働くと効果が激増する。

35.1.2 先天性アンチトロンビン III 欠乏症 antithrombin deficiency

典拠:Beck:Hematology [1, p.597] ,
典拠:Harper [27, p.725] ,
典拠:医学生・研修医の ための血液病学 [45, p.217] ,
典拠:図説分子病態学 [40, p.267]

概念

アンチトロンビン III の欠乏や異常によって凝固系の亢進して静脈血栓を多発する、常染色体優性遺伝病である。

  • アンチトロンビン III antithrombin III の生理作用
    ATIII は、トロンビンや凝固カスケードで働く他のセリンプロテアー ゼの活性を阻害する。特にトロンビン、Xa 因子、IXa 因子を直接に阻害して凝固系を制御する。

症状

  • 反復性の静脈性血栓
  • 肺塞栓症

治療

ワーファリンの経口投与を行なう。

35.1.3 先天性プロテイン S 異常症 protein-S deficiency

典拠:Beck:Hematology [1, p.597] ,
典拠:エッセンシャル血液病学 5 版 [54, p.254]

概念

先天的にプロテイン S を欠く常染色体優性の遺伝病である。

病態生理

プロテイン S の生理的機能は、活性型プロテイン C に結合し、凝固系の VIII 因子および V 因子を分解し、その作用を失活させる点にある。先天的にプロテイン S を欠く本症では凝固能の亢進によって血栓症を来たしやすい。

35.1.4 先天性プロテイン C 異常症 protein-C deficiency

典拠:Beck:Hematology [1, p.597] ,
典拠:図説分子病態学 [40, p.270]

プロテイン C の生理作用

トロンビンおよび血管内皮細胞に存在するトロンボモジュリンの作用によって活性化され、タンパク分解能を獲得する。

  • 凝固系への阻害作用
    プロテイン C を活性化する原因となったトロンビンはそもそも凝固系 を促進させる因子であるから、トロンビンによるプロテイン C の活性化は凝固系における負のフィードバック機構である。
    • Va 因子の不活化
    • VIIIa 因子の不活化
  • 線溶系への作用
    プロテイン C はプロテイン S とともに働いて、PAI-1 が tPA を不活化するのを阻害し、線溶系の促進に寄与する。

症状

静脈性の血栓症。

35.2 後天性血栓性疾患

種類

  • 抗リン脂質抗体症候群
  • 自己免疫疾患
    • SLE
    • ベーチェット病
    • 潰瘍性大腸炎
  • 内分泌疾患
    • 糖尿病
    • クッシング症候群
    • 高脂血症
  • DIC
  • 血液疾患
    • TTP

35.2.1 抗リン脂質抗体症候群 antiphospholipid syndrome, APS

典拠:Beck:Hematology [1, p.592] ,
典拠:NIM 血液病学 4 版 [48, p.270] ,
典拠:最新 内科学大全:血小板・凝固・線溶異常 [38, p.339] ,
典拠: 医学生・研修医のための血液病学 [45, p.211] ,
典拠: 三輪 - 血液病学 2版 [50, p.1340] ,
典拠: エッセンシャル血液病学 [53, p.378]

概念

SLE などの自己免疫疾患において血栓症や血小板減少などを合併した症候群。血液凝固系においてリン脂質を必要とする反応 (外因性凝固系) を阻害するにもかかわらず、不思議なことに出血傾向ではなく血栓形成が促進される。

病理

  • 血栓の多発
  • 血小板減少

症状

  • 動静脈血栓
  • 習慣流産

検査所見

  • lupus anticoagulant とよばれる抗リン脂質抗体の証明
    lupus anticoagulant は個々の凝固因子活性を抑制することなく、リン脂質依存性の凝固反応を阻害する免疫グロブリン。しかし臨床的には予想される出血傾向よりも血栓形成を主症状とする。
  • 抗カルジオリピン抗体の証明
    カルジオリピン cardiolipin とは酵素抗体法で抗リン脂質抗体の抗原に用いられる物質。
  • プロトロンビン時間の延長
    リン脂質との抗原抗体反応によって外因性凝固系が阻害されるから。

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