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肝胆膵 10 急性肝炎 acute hepatitis

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→ 肝胆膵系 目次

Chapter 10 急性肝炎 acute hepatitis

典拠:Pathophysiology [17, p.328] 典拠:ハリソン内科学 [6, p.1458]

分類

  • 急性ウイルス性肝炎
  • 薬剤性肝炎

10.1 劇症肝炎 fulminant hepatitis,fulminant hepatic failure

典拠:Diagnosis And Treatment In Gastroenterology [10, p.475] ,
典拠: NIM 消化器病学 4 版 [60, p.347] 典拠:組織病理アトラス [82, p.126] ,
典拠:最新内科学大全:ウイルス 肝炎 [p.205]

概念

「急激で広範な肝細胞壊死に基づいて肝不全を呈する急性肝炎のうち、症状発現後 8 週間以内に高度の肝不全に基づいて肝性昏睡 II 度以上の肝性脳症を来たし、肝予備能を示すプロトロンビン時間が 40%以下となるもの」である。 致死率が 70%を超える極めて予後不良な疾患であるが、生存した場合は慢性化することなく肝細胞は完全に治癒する。

分類

  • 急性型 発症後 10 日以内に脳症が発現するもの。多くは HBV もしくは HAV感染が原因である。
  • 亜急性型 発症後 10 日以降で脳症が発現するもの。予後が極めて悪いため、肝移植の適応になりうる。多くは原因不明である。

原因

  • ウイルス感染
    • ウイルス性肝炎
      特に B 型肝炎がもっとも多く、A 型肝炎がそれに続く。肝細胞へのウイルス感染に続発する宿主側免疫応答の過剰に起因するものと考えられている。
  • 薬剤性劇症肝炎
    アセトアミノフェンが有名である。
  • Budd-Chiari 症候群
  • Wilson 病

病態生理

広範な肝細胞の壊死が生じ、急激な肝不全に至る。

  • 肝性脳症
    高アンモニア血症に起因する。
  • 脳浮腫
    機序は不明であるが、予後不良となる。

症状

感冒様症状で発症するが重篤感は強い。 * 肝不全症状
特に肝性脳症を呈し、傾眠や昏睡をきたす。 * 肝濁音界の縮小

検査所見

  • プロトロンビン時間 PT が 40%以下
    凝固因子の多くはセリンプロテアーゼの前駆体であり、主に肝細胞で産生されるので肝予備能の指標となる。しかも凝固因子は半減期が短いので、急性の経過を辿る本症の病態評価に適している。
  • 肝機能異常
    AST と ALT はともに著明に上昇する。
  • 画像所見
    広範な壊死によって萎縮した肝臓が確認される。
  • 血中芳香族アミノ酸の増加
    Fisher 理論によれば血中に増加した芳香族アミノ酸が偽性神経伝達物質の合成に関与し、正常な神経伝達であるドーパミンやノルアドレナリンに代わって作用するために肝性脳症が出現する。
    • Fisher 比
      Fisher 比とは分岐鎖アミノ酸と芳香族アミノ酸の比であり、劇症肝炎では低下する。
  • 低血糖
    肝臓からのグルコース放出や糖新生が障害されて低血糖となる。
  • 血清コレステロール低値
  • 血中肝細胞成長因子 HGF が上昇する

合併症

  • DIC
  • 感染症
  • 脳浮腫
  • 肝腎症候群

病理所見

  • 初期では鬱血のために肝臓が肥大する
  • 後期では 広汎な肝細胞の壊死 によって肝臓が萎縮する
    急性黄色肝萎縮・急性赤色肝萎縮と呼ばれる。

治療

肝細胞が再生されるまで合併症に対する治療を行なうことが必要である。

  • 分岐鎖アミノ酸による窒素バランスの補正
    Fisher理論によれば血中に増加した芳香族アミノ酸が偽性神経伝達物質の合成に関与し、正常な神経伝達であるドーパミンやノルアドレナリンに代わって作用するために肝性脳症が出現する。そこで分岐鎖アミノ酸を投与して芳香族アミノ酸とのアミノ酸バランスの補正を図る。
  • アンモニア対策
    ラクツロースを経口投与してアンモニアの腸管内吸収を抑制するとともに、腸内細菌のウレアーゼ活性を抑制するために抗生剤を投与する。
    • ラクツロース lactulose
      腸内の消化酵素で分解されないため浸透圧を上昇させるほか、腸内細菌のアンモニア合成を抑制する。
    • 抗生剤投与
      カナマイシンなどの非吸収性抗生剤を経口投与し、腸内ウレアーゼ産生菌を抑制する。
    • 低タンパク食
      タンパク摂取を制限して高アンモニア血症の改善を図る。
  • 血漿交換 plasmapheresis
    肝臓が回復するまでその機能を一部代替する。
  • グルカゴン-インシュリン療法
    グルカゴンとインシュリンを同時に点滴することで、肝細胞内のグリコーゲンを一掃する。
  • 肝移植
    劇症肝炎の亜急性型は肝移植の適応になりうる。

10.2 薬剤性肝炎, 薬物性肝障害

典拠: NIM 消化器病学 4 版 [60, p.494] ,
典拠:最新内科学大全:肝・胆・膵疾患 [50, p.146]

原因

  • 抗生剤
  • アセトアミノフェン
    中毒性肝障害を生じる代表的な薬物である。
  • ハロセン

病態生理

肝臓は薬物の代謝ならびに解毒の場として薬物が高濃度に濃縮される器官 であるため、薬物からの損傷を被りやすい。 * 薬物アレルギー性肝障害
ほとんどの薬物は分子量が小さいのでそのままでは抗原性を持たない。 薬物代謝の過程でキャリアーのタンパクと結合し、これが血中に漏出しててはじめて免疫応答を惹起しうる。発症には投与量は関係なく、アレルギーの既往を持つ者ほど発症しやすい。 * 中毒性肝障害
薬物の中間代謝物が生体の細胞成分などと強く反応して毒性を発揮する。原則として投与量に比例して発症し、発症までの潜伏期間が短いという特徴がある。

症状

一般的な肝炎の症状に加えて、薬物アレルギーによるものでは発疹や皮膚掻痒などの症状が出現する。

検査所見

  • 好酸球増多
    薬物アレルギー的機序によるものでは好酸球が上昇する。
  • リンパ球幼若化試験, リンパ球刺激試験 lymphocyte stimulating test,LST
    患者血中より採取したリンパ球に原因薬剤を添加して培養する。この際にアイソトープで標識した核酸前駆物質を添加し、アイソトープのリンパ球核内の取り込みを測定することでリンパ球の核酸合成の程度を調べる。

治療

まず原因薬物を中止する。


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