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medical praxis - web版 医学ノート - 国家試験対策

学問の上で大いに忌むべきは、したり止めたりである。したり止めたりであれば、ついに成就することはない。

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肝胆膵 12 自己免疫性肝疾患

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→ 肝胆膵系 目次

Chapter 12 自己免疫性肝疾患

典拠:最新内科学大全:自己免疫疾患と免疫不全 [42, p.135]

12.1 自己免疫性肝炎 autoimmune hepatitis,lupoid hepatitis,AIH

典拠:Diagnosis And Treatment In Gastroenterology [10, p.495] ,
典拠:NIM 消化器病学 4版 [60, p.435] ,
典拠:標準病理学 [52, p.401] ,
典拠:自己免疫性肝疾患 [54, pp.1* 46] ,
典拠:最新内科学大系:自己免疫疾患と免疫不全 [42, p.138] ,
典拠:Proceedings: Viral Hepatitis Liver Disease [13, p.205] ,
典拠:アトラス肝臓病 1 版 [73, p.55]

概念

中年以降の女性に好発し、早期に肝硬変への進展傾向を示す慢性活動性肝炎である。その病因としては自己免疫性機序が関与し、ウイルス・アルコール・薬物などは除外される。 正常な肝細胞の細胞膜に対する免疫応答によって肝組織が傷害され炎症を惹起したもので、しばしば急速に肝硬変に発展する。組織学的には慢性肝炎活動型を呈する。 ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、薬剤性肝炎、SLE などが鑑別疾患となる。

病因

  • ウイルス感染
    微生物と自己タンパクとの間のアミノ酸配列の相似性、自己抗原の修飾、免疫系システムへの障害などが発症の要因と考えられている。
    • HCV
      HCV と LKM-1抗原との間には配列の相似性が見られる。HCV は LKM-1抗体を誘導することはないが、核抗原と反応する anti-GOR抗体を誘導する。
  • 薬剤性
    • dihydralazine
    • tienilic acid
  • 遺伝的背景として HLA-DR4 と HLA-DR3

病態生理

産生された自己抗体により ADCC が起こるか、何らかの機序で自己寛容が破綻して活性化された Tリンパ球によって組織が傷害されるものと考えられている。

  • 仮説 1:T リンパ球の自己寛容破綻
    AIH では IFN-γなどのサイトカインの作用によって肝細胞上に MHC class II の HLA-DR が発現し、肝細胞自身が抗原提示細胞として機能することが示されている。とすればもし補助刺激因子が抗原提示細胞としての肝細胞上に同時に誘導されれば、抗原提示を受けた T 細胞はアネルギーに陥ることなく、自己免疫が発動すると考えられる。
    なんらかの機序で補助刺激因子が発現し、自己抗原を載せたMHC2 が CD4+T 細胞によって認識されると、CD4+T 細胞が IL-4 の存在下にて Th2 cell に誘導され、B 細胞を活性化して抗体産生を促進する。こうして最終的に液性免疫が発動するとも考えられる。
  • 仮説 2 ADCC
    細胞表面に結合した抗体量が少ないときは、補体が活性化されない。 かわりに NK細胞・マクロファージ・好中球が細胞表面の IgG や IgE に結合して、これらの細胞を傷害する。

なお HLA-DR4 と HLA-DR3 が疾患感受性遺伝子と考えられている。

病型

  • I 型, ルポイド肝炎 lupoid
    抗平滑筋抗体もしくは抗核抗体が陽性となるもので、自己免疫性肝炎では最多。ステロイドが著効する。SLE で見られる LE細胞が陽性となることがあるため、ルポイド肝炎 lupoid と呼ばれる。
  • II 型 anti-LKM1 抗体が陽性となる。
    • IIa 型
      anti-LKM1 は陽性で HCV 抗体が陰性となる。
    • IIb 型
      anti-LKM1 とともに HCV 抗体が陽性となる。インターフェロン療法が有効である。
  • III 型
    SLA 抗体が陽性となる。

検査所見

  • 血沈亢進や CRP値の上昇
    スクリーニングに利用される。
  • 高γグロブリン血症
    なかでも特に IgG の上昇が著明である。
  • 自己抗体陽性
    抗核抗体や抗平滑筋抗体が陽性となる。
    • 抗核抗体 ANA
      他の自己免疫疾患やウイルス肝炎などでも陽性となることから本症に特異的な所見ではないが、病状と相関する。
    • 抗平滑筋抗体 SMA
      アクチンに対する抗体であり、本抗体も本症に特異的な抗体ではない。
    • 肝腎ミクロゾーム抗体 anti-LKM1
      この抗体はミクロゾームの cytochrome P450 II D6 を抗原として認識し、in vitro ではこの発現を抑制する作用を持つが、 in vivo では P450 発現抑制作用を持たない。
    • 抗肝細胞膜抗体 LMA
      肝細胞膜上の抗原に対する抗体であることから、ADCC などを介して病態に直接関わる可能性が高い抗体である。
    • アシアロ糖タンパク受容体抗体 ASGPR
      肝臓に特異的な膜抗原であることから、病態に直接関わる可能性が高い抗体である。肝臓に浸潤する T細胞は ASGPR に反応することがわかっているが、本抗体自体は自己免疫性肝炎の分類には関係せず、ウイルス性肝炎でも検出されることがある。
    • 抗可溶性肝タンパク抗体 SLA

病理所見

慢性肝炎に類似する。

  • 門脈域への形質細胞の浸潤が比較的特異的な所見である
  • 削り取り壊死 piecemeal necrosis
    門脈域に接した肝小葉とグリソン鞘の間がギザギザになり、その近くの肝細胞が壊死に陥る。
  • lobular hepatitis

鑑別疾患

C 型肝炎との鑑別がもっとも重要である。けだし両者は治療を異にし、免疫系を賦活化する IFN 療法は AIH を増悪させる危険があり、一方でステロ イド療法はウイルス性肝炎を増悪させる危険があるからである。

治療

ステロイド剤の投与で著効を示す。ステロイド剤の副作用が生じた場合は アザチオプリンが用いられる。

12.2 原発性胆汁性肝硬変 primary biliary cirrhosis, PBC

典拠:Diagnosis And Treatment In Gastroenterology [10, p.679] ,
典拠: NIM 消化器病学 4 版 [60, p.429] ,
典拠:組織病理アトラス [82, p.135] ,
典拠:病理学 [52, p.287] ,
典拠:消化器病学 [56, p.429] ,
典拠:最新内科学大系:肝硬変 [37, p.327,p.47]

概念

自己免疫学的機序によって肝内胆管が破壊され、胆汁が肝臓内に鬱滞することによって肝硬変へと進行する。中年女性に好発し、しばしばシェーグレン症候群に合併する。

病態生理

肝内の胆管上皮細胞に対して自己免疫反応が引き起こされ、Tリンパ球によって胆管が傷害される。胆管炎によって小葉間胆管が破壊されると胆汁鬱滞を呈する。

  • 肝内胆汁鬱滞性黄疸
    肝臓内の毛細胆管の閉塞によって抱合型ビリルビンが鬱滞する。

症状

  • 皮膚掻痒感 pruritus
    初発症状であることが多い。一般に直接ビリルビン優位の胆汁鬱滞型 黄疸は皮膚掻痒感が強い。
  • 高度な黄疸
  • 黄色腫

検査所見

  • 胆道系酵素の上昇
    胆嚢の破壊を反映して、ALPγGTP などの胆道系酵素が上昇する。 特に ALP 高値にて健診で発見されることが多い。
  • 高γグロブリン血症
    IgM が増加することが多い。
  • 抗ミトコンドリア抗体 AMA が陽性
    本症に高頻度に検出される自己抗体であり、なかでも anti-M2 抗体が特に疾患特異性が高い。
  • 高コレステロール血症
    胆汁鬱滞によりリポタンパクが上昇するから。

合併症

  • 膠原病
    なかでもシェーグレン症候群と全身性進行性硬化症が有名である。
  • 脂溶性ビタミン欠乏
    • 骨粗鬆症
      胆汁排泄障害によるビタミンDの吸収障害のためにカルシウムの吸収が低下し、骨粗鬆症や骨軟化症をもたらす。
    • ビタミン A 欠乏症

病理所見

慢性の非化膿性破壊性胆管炎を特徴とし、病態をよく反映している。

  • 慢性非化膿性破壊性胆管炎 CNSDC 小葉間胆管の周辺にリンパ球・形質細胞の浸潤があり、細胆管の破壊像をはじめとして線維化や肉芽腫も見られる。
  • グリソン鞘での結合組織増生
  • 胆汁鬱滞による黄疸

治療

無症候性やビリルビン値の低いものは予後良好である。

  • 薬物療法
    • ウルソデオキシコール酸 ursodeoxycholic acid,UDCA
      内因性の胆汁酸が本剤によって置換される。
    • コレスチラミン
      イオン交換樹脂剤であり、皮膚掻痒感を軽減する。
  • 肝移植

自己免疫疾患と考えられているが、ステロイド療法は骨病変を悪化させるので禁忌となる。


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