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肝胆膵 13 ウイルス性肝炎 viral hepatitis

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→ 肝胆膵系 目次

Chapter 13 ウイルス性肝炎 viral hepatitis

種類

組織像からは鑑別できない。

  • A型肝炎
    RNA ウイルスの経口感染で発症し、慢性化することはない。
  • B型肝炎
    DNA ウイルスの parenteral 感染。
  • C型肝炎: ssRNA ウイルス
  • D型肝炎: defective RNA ウイルス
    D 型肝炎ウイルスはその複製に B 型肝炎ウイルスの酵素を必要とする。
  • E型肝炎
    RNA ウイルスの経口感染。
  • G型肝炎: RNA ウイルスの parenteral

13.1 急性ウイルス性肝炎

典拠:chart 内科 5 [75, p.164] ,
典拠:標準消化器病学 [60, p.402] ,
典拠:組織病理 アトラス [82, p.122] ,
典拠:Diagnosis And Treatment In Gastroenterology [10, p.484] ,
典拠:新臨床肝臓病 [63, p.17] ,
典拠:ハリソン内科学 [6, p.1458]

概念

肝炎ウイルスによる急性肝炎であり、サイトメガロウイルス・単純ヘルペスウイルスなどによる肝炎はウイルス性肝炎に含めない。

病期分類

  1. 前駆期
  2. 前黄疸期
  3. 黄疸期
  4. 回復期

病理所見

急性ウイルス肝炎の一般的な組織所見は以下の通りである。

  • グリソン鞘への炎症性細胞浸潤
  • 小葉中心部における肝細胞の巣状壊死
    壊死に陥った肝細胞が好酸性色素に染まる (好酸小体 eosin body)。この処理のためにクッパー細胞が増生する。
  • 肝細胞の風船化 baloon cell

合併症

  • 腎障害
  • 再生不良性貧血

13.1.1 A 型肝炎 hepatitis A,HAV

典拠:Diagnosis And Treatment In Gastroenterology [10, p.485] ,
典拠:Diseases Of The Gastrointestinal Tract And Liver [7, p.653] ,
典拠:最新内科学大系:ウイルス肝炎 [34, p.3,p.97] ,
典拠:最新内科学大系:ウイルス感染症 [45, p.223]

概念

経口感染で発症し、急性肝炎となるが決して慢性化しない。したがって予後良好であるが、極まれに劇症肝炎に発展する。治癒後は終生免疫を獲得するため好発年齢は若年層である。

原因

貝類の生食による感染が多く報告されている。

病態生理

ウイルスは主に患者の糞便中に排泄され、これが感染源となって糞口経路で感染が成立する。流行性の感染は糞便によって水資源が汚染されて生じることが多い。

症状

感染後 3 週間で発熱・咽頭痛などの感冒様症状が出現し、続いて黄疸が出現する。

検査所見

  • IgM-HAV 抗体の検出
    IgG の検出は以前の感染を、IgM の検出は最近の感染を示す。A型肝炎では IgG抗体によって終生免疫が成立するため、IgM抗体の検出で急性期の確定診断を行なう。もし IgG抗体で診断する場合はペア血清を用いる。
  • TTT 値の上昇

治療

慢性化することはないため、安静と食事療法のみで十分である。ただ劇症肝炎への移行に注意すれば足りる。

13.1.2 E型肝炎 hepatitis type E,HEV

典拠:MedicalMicrobiology [9, p.428] ,
典拠:Diagnosis And Treatment In Gastroenterology [10, p.493] ,
典拠:最新内科学大全:ウイルス感染症 [45, p.227]

概念

汚染された水からの E型肝炎ウイルスの経口感染により発症するが、日本ではほとんど発症例がない。慢性化はないが、激症化はありうる。特に妊娠後期に激症化し、致死的である。

13.2 慢性ウイルス性肝炎 chronic viral hepatitis

典拠:組織病理アトラス [82, p.124]

慢性ウイルス性肝炎の病理所見

  • グリソン鞘を中心とした持続性の炎症により、グリソン鞘の広汎な線維化が見られる
  • 慢性活動性肝炎の場合
    • 炎症性細胞浸潤
      門脈域には多数のリンパ球の浸潤を認める。
    • 限界板 limiting plate の破壊
      グリソン鞘と肝実質の境界が不明瞭になる。
    • piecemeal necrosis
      門脈域に接した肝細胞が壊死に陥る。
    • 肝小葉の改築

13.2.1 B型肝炎 hepatitis B,HBV

典拠:異常値の出るメカニズム 3 版 [55, p.305] ,
典拠:検査のポイント [59, p.500] ,
典拠:Diagnosis And Treatment In Gastroenterology [10, p.487] ,
典拠:NEW 産婦人科学 [90, p.402] ,
典拠:Diseases Of The Gastrointestinal Tract And Liver [7, p.655] ,
典拠:NEW 臨床検査診断学 [58, p.346] ,
典拠:最新内科学大全:肝癌 [35, p.17] ,
典拠:最新内科学大全:ウイルス肝炎 [34, p.119,p.231]

概念

B 型肝炎ウイルスが体液を介して感染し、その 3~6 割が劇症肝炎になり、1 割が慢性化する。慢性化するのは宿主の免疫応答が十分でない場合であり、肝硬変を経て肝ガンへ発展することがある。 多くは出生時に産道感染してキャリアーとなる。

  • B型肝炎ウイルス Hepadnavividae
    不完全な環状DNA をゲノムに持つ DNAウイルスであり、肝細胞の DNA に組み込まれる。そもそも肝細胞への DNA 組み込みは B型肝炎ウイルスの生活環には関係していない。

原因

一過性感染は輸血や性交による。持続感染は胎児の垂直感染により、そのほとんどは産道感染である。そのため母体がキャリアーである場合で感染が確定していない新生児に対しては直ちに感染予防措置を行なう。

  • 輸血
  • 性交
  • 産道感染

病型

  • (キャリアー)
    大部分は乳児期に感染して免疫寛容が成立して生じたものである。免疫検査では HBs抗原陽性、HBs抗体陰性、HBe抗原陽性、HBe抗体陰性となる。特に IgG-HBc抗体が強陽性となり、診断に利用される。
  • B型急性ウイルス肝炎
    B 型肝炎ウイルスの初感染により、2ヶ月程の潜伏期ののちに肝臓を主病変として発症する全身感染症である。肝細胞上に表出されたHBc抗原に対する細胞性免疫が組織障害の中核にあると考えられている。HBs抗原が一過性に出現し、消失とともに治癒する。診断は主にIgM-HBc抗体の上昇でなされる。
  • 激症型
    宿主の過剰な免疫応答によって起こる。特に無症候性キャリアーからの急性発症で劇症化しやすい。
  • 慢性型
    宿主の免疫応答が十分でない場合に起こり、成人の初感染ではほとんどが治癒する。B型肝炎ウイルスの持続感染では約30年の経過で肝硬変を経て肝癌へ発展する。

病態生理

  • CTL による細胞障害が主な毒性
    感染肝細胞上に発現した HBc抗原あるいは HBs抗原を CTL が認識 し、これを障害する。 したがって垂直感染による新生児はウイルスに対して免疫学的寛容を獲得し、無症状のままにキャリアとなる。

症状

潜伏期 1~3ヶ月を経て感冒様症状で発症するが、多くは 2ヶ月前後で治癒する。

検査所見

  • 免疫学的診断 ウイルス性肝炎のうちで HBV だけは抗原による診断が可能
    • 抗原検査
      • HBs抗原
        膜上の抗原。B 型急性肝炎では感染早期より上昇し、発症後約 1~2ヶ月で消失するので感染状態をよく反映する。
      • HBe抗原
        野生型 HBV の増殖時に分泌されるタンパクである。HBV 増殖の指標として頻用され、高値であるほど感染力が強く、長期にわたって持続するほど肝硬変から肝癌へいたることが多い。
      • HBc抗原
        核抗原であり、これが宿主の肝細胞の表面に提示されると細胞性免疫が作動する。CTL のこの HBc抗原に対する細胞障害が主な毒性となる。ただし核抗原であるため、血清中では検出できない。
    • 抗体検査
      • IgM-HBc 抗体
        初感染からの急性発症の際に上昇し、現在の HBV 感染を表わすため、急性B型肝炎の確定診断に利用される。
      • IgG-HBc 抗体
        IgM-HBc抗体に遅れて、ALT 上昇とともに出現し、IgM-HBc抗体が陰性となった後も持続陽性となる。
      • HBs 抗体
        HBs抗原が消失する頃に出現する中和抗体である。HBV 感染 もしくは HBワクチンの既往を示唆し、HBワクチン摂取後も しくは HBV 感染後から約 3ヶ月を経て陽性となる。
      • HBe 抗体
        HBe抗原陽性から HBe抗体陽性へと変化することを seroconversion といい、HBVキャリアでの肝炎の終息を意味する。 HBV 増殖に反応して宿主の免疫応答が HBV 増殖を凌駕するほどに活発化すると、HBe抗原が消失して HBe抗体のみが陽性となる seroconversion を生じる。
    • 遺伝子検査
      B型肝炎ウイルスのゲノムを検出する。
      • HBV-DNA
        HBe抗原とともにウイルスの増殖をよく反映し、検出される回数が多いほど肝細胞癌の合併を示唆する。

合併症

  • 膜性腎症
    HBs抗原が病因に関与しており、特に小児の B型肝炎で認められる。

予後

激症化して死亡する場合を除いて治療せずとも全例が完全に治癒し、慢性肝炎に移行する例も極めて稀れである。ただし慢性化すると予後不良となる。

治療

  • 薬物療法
    • ステロイド離脱療法
      ステロイドの免疫抑制作用によって一時的に HBV 量を増加させ、薬剤投与を突然中止して免疫応答の反跳を誘発させることでHBV の根絶をもたらし、 seroconversion を人工的に生じさせるという戦略である。一時的に肝炎が増悪するので肝予備能が残存している症例に限られる。
    • インターフェロンα
    • ラミブジン lamivudine
  • 感染予防
    感染が疑われる新生児に対しては生後 48 時間以内に抗HBsヒト免疫グロブリンを投与したあと、受動免疫の効果が弱まる生後 2ヶ月頃に初回の HBワクチンを接種する。感染が疑われる成人に対しては直ちに抗HBsヒト免疫グロブリンと HBワクチンを投与する。
    • 抗HBsヒト免疫グロブリン
      抗HBs抗体高力価の製剤であり、受動免疫となる。効果は3ヶ月程度である。
    • HBワクチン
      HBs抗原の液剤であり、3 回接種によってようやく HBs抗体が陽性に転じる (能動免疫)。

13.2.2 C 型肝炎 hepatitis C

典拠:Medical Microbiology [9, p.427] ,
典拠:検査のポイント [59, p.504] ,
典拠:Diagnosis And Treatment In Gastroenterology [10, p.490] ,
典拠:最新内科学大全:ウイルス肝炎 [34, p.262]

概念

C 型肝炎ウイルスが体液を介して感染する。高頻度 (50%以上) に慢性化を起こし、発症後約20年を経て肝硬変、肝細胞癌へと至る。

病因

輸血による C型肝炎ウイルスの感染が主な原因となる。性交や産道感染では感染が成立しにくい。

  • HCV
    プラス鎖の一本鎖RNAウイルスであり、C 型肝炎ウイルスの病原体である。

検査所見

HCV はウイルス量が少ないために抗原検査は困難であり、主にHCV-RNAの測定がなされる。

  • 肝機能障害
  • 抗体検査
    • 抗HCV-IgG抗体の検出
      現在または過去の感染を示し、暴露後 2ヶ月で陽性となる。
    • コア抗体の検出
      コアタンパクに対する抗体を検出する。
  • HCV-RNA の検出
    鋭敏な検査であるため汚染による偽陽性が起こりうる。

合併症

  • 膜性増殖性糸球体腎炎

病理所見

ウイルス性肝炎の病理所見に加えて、特に胆管の増生が見られることがある。

  • 限界板破壊
    グリソン鞘と肝実質の境界が不明瞭になる。
  • piecemeal necrosis
    門脈域に接した肝細胞が壊死に陥る。
  • 肝小葉の改築

治療

  • インターフェロン療法
    IFN-α および IFN-β が B型および C型の活動性肝炎の治療薬として用いられる。IFN は感染細胞内においてウイルスの核酸合成およびタンパク合成を阻害する。インターフェロンの抗ウイルス効果は DNAウイルスよりも RNAウイルスに対して有効なので、C 型肝炎により効果的である。その効果は、肝硬変の進行度が小さいほど、また HCV-RNA 量が少ないほど有効である。
    • IFN-α
      副作用として抑欝が強く、症状が出現すれば直ちに投与を中断する。
    • IFN-β
  • 肝移植
    肝硬変の進行した症例や HCV-RNA が多量でインターフェロン療法が期待できない症例は肝移植を考慮すべきである。

13.2.3 D型肝炎

特徴

D型肝炎ウイルスはその複製に B型肝炎ウイルスの酵素を必要とする defective RNAウイルス である。特に B型肝炎ウイルスのキャリアに重複感染した場合は慢性化する。


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