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肝胆膵 14 肝硬変 liver cirrhosis,LC

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→ 肝胆膵系 目次

Chapter 14 肝硬変 liver cirrhosis,LC

典拠:Pathophysiology [17, p.348] ,
典拠: NIM 消化器病学 4 版 [60, p.441] ,
典拠:組織病理アトラス [82, p.132] ,
典拠:Diagnosis And Treatment In Gastroenterology [10, p.471] ,
典拠:医学生・研修医のための消化器病学 [57, p.258] ,
典拠:腹部画像診断学 1 版 [89, p.4]

概念

「肝細胞の壊死を原因として、びまん性の結合組織の増生 (線維症) が肝全域に見られるとともに、肝実質の結節再生と小葉構造の改築が認められるもので、不可逆性である。」
「広範な線維化と再生結節とを伴う肝小葉実質の改築性病変で、中心静脈と門脈域を結ぶ結合織の隔壁が広範に形成され、隔壁中に求心性および遠心性の脈管系の吻合が形成されている状態。」
「肝の慢性疾患であり、びまん性の肝細胞の破壊と再生、ならびに結合組織のびまん性の増殖の結果、肝の小葉構造と脈管系の改築が認められる状態」

病因

  • 慢性肝炎
    ウイルス性肝炎 (特に C型肝炎) や自己免疫性肝炎が原因となる。
  • 慢性胆管障害
    原発性胆汁性肝硬変や原発性硬化性胆管炎が原因となる。
  • 先天性代謝疾患
    血色素症や Wilson病が原因となる。
  • アルコール性肝障害
  • 薬剤性肝障害
    テトラサイクリンやアセトアミノフェンなど様々な薬剤が肝障害をもたらす。

病態生理

肝硬変の病態は主に肝血流障害と肝実質機能低下によってもたらされる。

  • 門脈圧亢進症
    肝小葉の改築によって肝静脈が圧迫されると、門脈-類洞-肝静脈という肝血流の流れに循環障害をきたし、血管抵抗が増大して門脈圧が上昇する。この結果、黄疸をはじめ、腹水や食道静脈瘤をもたらす。
    • 脾機能亢進
      血小板減少をはじめとして、進行すると汎血球減少をきたす。
  • 代謝障害
    • 低アルブミン血症
    • 肝性脳症
    • 凝固障害
  • 肝腎症候群

症状

  • 門脈圧亢進による症状
    • 食道静脈瘤
    • 腹水
    • メデューサの頭
      肝硬変などによって門脈の閉塞が生じると、門脈血は臍旁静脈から腹壁の皮静脈を経て上大静脈・下大静脈に流入するようになる。このときに臍の周辺の皮静脈が放射状に拡張し、これをメデューサの頭という。
  • 肝腫大
  • 皮膚症状
    • 黄疸
      ビリルビンは抱合型も非抱合型もともに上昇するが、抱合型の直接ビリルビンが優位となる。
    • クモ状血管腫 vascular spider
      肝硬変や妊娠時において上肢や胸に見られる皮膚病変で、中心が赤色を呈し、そこから毛細血管が放射状に伸びている。
    • 手掌紅斑 palmar erythema
      慢性の肝細胞機能不全のあるときに手掌の拇指球が強く紅潮する 現象をいう。
    • バチ状指
    • 紙幣状皮膚
  • 女性化乳房
    肝機能の不全のためにエストロゲンの不活化が障害されて生じる。
  • 肝性脳症

検査所見

  • 臨床検査所見
    • 汎血球減少
      • 血小板減少
        脾機能亢進によって汎血球減少症をきたし、特に血小板が顕著に減少する。
    • アルブミン低下
    • ICG試験遅延
    • PT延長
    • 低ナトリウム血症
      アルブミン合成低下により循環血液量が減少すると代償的にADH 分泌が亢進し、その結果として集合管において Na+ 排泄と水分の再吸収が生じる。
    • ヒアルロン酸高値
  • 画像所見
    肝硬変に伴なう形態的変化は、右葉を中心とした肝の萎縮をはじめとして、肝辺縁の凹凸不整、脾腫、発達した側副血行路である。

    • 腹部 CT 所見
      肝表面の不整像に加えて右葉萎縮・左葉の腫大が認められる。
    • 腹部エコー
      左葉腫大、辺縁鈍化、肝表面の不整像が認められる。
    • 腹腔鏡
      肝臓表面にびまん性の結節が視認される。

合併症

肝不全・消化管出血・肝ガンなどを合併し、やがて死に至る。消化管出血は門脈圧亢進による食道静脈瘤の破裂のほか、合併した胃潰瘍による出血もある。

  • 肝臓癌
  • 消化管出血
  • 易感染性
  • 肺動静脈瘻

病理所見

  • 肉眼的結節の形成
  • 線維性隔壁の形成による肝小葉構造の改築 umbau
    肝小葉は線維性隔壁によって分画されて偽小葉を形成する。これによって偽小葉にはいる血流が制限されて、類洞性に門脈圧が亢進する。
  • びまん性病変

治療

  • アルブミン投与
  • 利尿剤
  • 食事療法
    • 食塩摂取制限

14.1 肝硬変の分類

典拠:NIM 消化器病学 4版 [60, p.447]

肝硬変の形態学的分類

  • 長与分類
    • 甲型 A type
      偽小葉が粗大で大小不同を呈し、線維性隔壁の幅も広い。偽小葉は元の肝小葉よりも大きく、壊死後性 postnecrotic に相当する。 これは壊死後に生じた空間を線維組織が埋めつくしたから。
    • 乙型 B type
      偽小葉が小型でそれを分かつ線維性隔壁の幅も狭い。偽小葉は元の肝小葉よりも小さく、肝炎後性 posthepatitic に相当する。これ は肝炎の際に生じた線維性隔壁で小葉が分割されたから。
    • 甲’ 型 A’ type
      甲型と乙型の中間像を呈し、肝硬変の末期像である。
    • 乙’ 型 B’ type
      偽小葉が部分的に不完全なものであり、乙型の前段階に位置する。
    • 丙型 F type
      乙型に似た微細な肝小葉の中に多量の脂肪沈着が見られるもので、 アルコール性肝硬変の病理像。
  • WHO の分類法
    • 小結節性 micronodular cirrhosis/portal cirrhosis
      結節が小型で、結合組織の幅が広い。
    • 大結節性 macronodular cirrhosis
      結節が大型で、結合組織の幅が狭い。
    • 混合型

重症度分類

  • Child の重症度分類
    腹水・脳症の程度・血清ビリルビン・血清アルブミン値を基準にした肝硬変の重症度分類である。
- A 群 B 群 C 群
総ビリルビン 2.0 以下 2.0~3.0 3.0 以上
アルブミン 3.5 以上 3.0~3.5 3.0 以下
腹水 なし 制御可能 制御不可
肝性脳症 なし 軽度 中等以上

病因的分類

  • ウイルス性 (HBVHCV)
  • アルコール性
  • 自己免疫性
  • 胆汁鬱滞性
  • 鬱血性
  • 代謝性
  • 寄生虫
  • 栄養障害

14.2 特殊型肝硬変

典拠:chart 内科 5 [75, p.192] ,
典拠:Diagnosis And Treatment In Gastroenterology [10, p.679]

  • 鬱血性肝硬変 congestive liver cirrhosis
    にくずく肝 nutsmeg を呈する点が特徴的である。
  • 原発性胆汁性肝硬変
    胆汁が肝臓内に鬱滞することによって肝細胞が壊死を起こして肝硬変を来たしたもの。
  • 原発性硬化性胆管炎
  • 自己免疫性胆管炎 autoimmune cholangitis

14.3 肝性脳症,門脈体循環性脳障害 hepatic encephalopa- thy

典拠:CMDT2003 [26, p.648] ,
典拠:標準救急医学 3 版 [79, p.518]
典拠:Harrison11 [5, p.1349] ,
典拠:Diagnosis And Treatment In Gastroenterology [10, p.565] ,
典拠:NIM 消化器病学 4版 [60, p.338] ,
典拠:最新内科学大全:肝硬変 [37, p.277] ,
典拠:臨床脳波学 5 版 [71, p.361] ,
典拠:臨床精神医学講座:薬物・アルコール関連障害 [65, p.173]

概念

多くは肝硬変に伴なってアンモニアをはじめとする毒性の窒素物質が門脈循環から出て体循環に流入し、さらに血液脳関門を通過することによって生じる脳疾患をいう。

肝性昏睡度分類

  • 昏睡度 I
    多幸や抑鬱などの精神症状が出現するが、回顧的に判断することも多い。
  • 昏睡度 II
    羽ばたき振戦が出現し、指南力低下も認められる。
  • 昏睡度 III
    羽ばたき振戦に加えて、興奮状態や嗜眠状態などを呈する。
  • 昏睡度 IV
    昏睡状態に陥るが、痛み刺激に反応する。
  • 昏睡度 V
    深昏睡状態で、痛み刺激にも反応しない。

病態生理

  1. 門脈系の破綻
    肝硬変によって肝血流が悪化すると、門脈から体循環へ短絡する側副経路が発達する。
  2. 小腸から吸収された有害物質が肝臓で解毒されることなく体循環を回って中枢神経系に到達する
    アンモニアの多くは腸管由来である。すなわち大腸において細菌がウレアーゼ作用により尿素からアンモニアを合成するほか、小腸においても粘膜内でアンモニアを合成し、腸間膜静脈に放出する。
  3. 肝性脳症
    以下の要因がもとでを発症する。
    • 高アンモニア血症
      尿素回路の破綻と、門脈圧亢進による門脈-下大静脈シャントによって腸内細菌由来のアンモニアが肝臓で代謝されることなく大循環系に流入し、さらに脳血液関門を突破して脳代謝障害を招く。
    • GABA の蓄積
      GABA はもともと肝臓で代謝されるから。
    • 血中の芳香族アミノ酸の増加と分枝鎖アミノ酸の減少

症状

  • 精神症状
    意識障害・昏睡・見当識障害などを呈する。
    • 肝性昏睡
      便秘・消化管出血・低カリウム性アルカローシスなどが誘因となる。
  • 羽ばたき振戦 flapping tremor
    上腕を伸展させ手を背屈させると、手が手首から上下に振戦する。
  • 肝性口臭

検査所見

  • 高アンモニア血症
  • プロトロンビン時間延長
  • 血清ビリルビン上昇
  • 低アルブミン血症
  • 脳波所見
    三相波や徐波化を呈する。
    • 三相波
      大きな陽性の振れの前後に小さな陰性の振れを伴なうものであり、 陰→陽→陰の三相を形成する。CO 中毒などでも発生し、肝性脳症に特異的な所見ではない。
  • 頭部 CT
    他の疾患を除外する目的で、あるいは合併した脳浮腫の程度を評価する目的で、施行される。

治療

  • アンモニア対策
    ラクツロースを経口投与してアンモニアの腸管内吸収を抑制するとと もに、腸内細菌のウレアーゼ活性を抑制するために抗生剤を投与する。
    • ラクツロース lactulose
      腸内の消化酵素で分解されないため浸透圧を上昇させるほか、腸内細菌のアンモニア合成を抑制する。
    • 低タンパク食
  • 分枝鎖アミノ酸療法
    アミノ酸バランスを補正する。

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