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medical praxis - web版 医学ノート - 国家試験対策

学問の上で大いに忌むべきは、したり止めたりである。したり止めたりであれば、ついに成就することはない。

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肝胆膵 23 肝臓の先天性代謝異常

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→ 肝胆膵系 目次

Chapter 23 肝臓の先天性代謝異常

典拠:Pathology NMS [19, p.282]

種類

  • 血色素症 hemochromatosis
    鉄の代謝異常のためにヘモシデリンが肝臓に蓄積される先天性疾患。
  • α 1-antitrypsin deficiency
  • wilson’s disease
  • Crigler-Najjar syndrome
  • グルクロン酸転移酵素の先天的な欠損によりビリルビンの抱合が行われず、非抱合ビリルビンが血中に増加する。

23.1 血鉄素症, ヘモジデローシス hemosiderosis

典拠:組織病理アトラス [82, p.117]

概念

輸血や鉄剤投与などで体内の鉄が過剰となり、主に網内系に鉄が沈着する疾患である。過剰なヘモジデリンが網内系のみならず組織に沈着するとヘモクロマトーシスとなる。

検査所見

  • 腹部単純CT
    沈着した鉄のために全体的に肝臓の濃度が亢進する。

23.2 血色素症, ヘモクロマトーシス, 鉄過剰症, 青銅色 糖尿病 hemochromatosis

典拠:STEP 代謝・内分泌 1 版 [81, p.98] ,
典拠:NIM 消化器病学 4版 [60, p.525] ,
典拠:Harper [28, p.712] ,
典拠:最新内科学大全:貧血・多血症 [39, p.100] ,
典拠:標準皮膚科学 5 版 [74, p.296] ,
典拠:アトラス肝臓病 1 版 [73, p.157]

概念

鉄の吸収過剰のためにヘモジデリンが肝臓や膵臓に蓄積されるものであり、古典的には肝硬変・皮膚の色素沈着・糖尿病を三徴とする疾患である。

分類

  • 原発性
    常染色体劣性遺伝性の先天性疾患である。先天的に鉄吸収能が高いと考えられている。男性のほうが女性より多く、これは女性は月経によって鉄を喪失しやすいからである。
  • 続発性
    • 鉄芽球性貧血
    • 鉄の供給過剰
    • アルコール性肝硬変

病態生理

  • 肝臓における鉄の代謝
    腸管から吸収された鉄は肝臓においてまずフェリチンとして貯えられるが、量が増すとフェリチンはリソソームによって分解されて hemosiderin となる。
  • 過剰な鉄はフリーラジカルを生成して組織を傷害する。
    しばしば肝硬変に発展し、肝細胞癌を合併することもある。

症状

  • 皮膚症状
    皮膚に沈着したヘモジデリンによって青銅色の色素沈着を呈する。
  • 肝腫大
  • 糖尿病による症状
    膵臓に沈着して内分泌機能を障害する。
  • 性腺機能障害
    陰萎や睾丸萎縮が見られるが、その機序は不明である。

検査所見

  • 鉄代謝
    血清鉄および血清フェリチン値は上昇し、鉄と結合していないトランスフェリンの量は減少するために不飽和鉄結合能 UIBC は低下する。
  • 腹部CT 所見
    肝臓に鉄が沈着するため、肝臓はびまん性に高吸収域 white liver を呈する。
  • 肝生検
    プルシアンブルー染色にて肝実質細胞への鉄の沈着を認める。

合併症

  • 肝細胞癌
  • 拘束型心筋症

治療

  • 静脈切開 phlebotomy
    血液の喪失によって造血が亢進し、貯蔵鉄が消費される。
  • 鉄キレート剤の投与
    • デスフェロキサミン desferrioxamine
      鉄の尿中排泄を促進する。

23.3 Wilson 病,肝レンズ核変性症 Wilson’s disesase, hepatolenticular degeneration

典拠:Clinical Neurology [16, p.245] ,
典拠:Kaplan: Comprehensive Textbook Psychiatry. 7ed [31, p.291] ,
典拠:MorningReport [27, p.226] ,
典拠:組織病理アトラス [82, p.373] ,
典拠:Diagnosis And Treatment In Gastroenterology [10, p.544] ,
典拠:NIM 消化器病学 4 版 [60, p.528] ,
典拠:病理学 [52, p.368] ,
典拠:Harper [28, p.713] ,
典拠:最新内科学大系:代謝性・中毒性神経疾患 [49, p.171]

概念

銅の胆汁中への排泄障害が生じ、全身の組織に銅が蓄積する常染色体劣性遺伝病である。

原因

責任遺伝子は染色体 13q.14.3 に存在し、銅結合タンパク ATP7B をコードしていることが判明した。

病態生理

そもそも食品中の銅は腸管で吸収されたあと肝臓にて ATP7B と結合して胆汁に排泄される。
ところが本症では ATP7B が欠乏しているため銅は胆汁中に排泄されずに肝臓に蓄積し、フリーラジカルを放出して肝組織を障害する。
飽和して血中に漏出した銅はアルブミンと結合するが、アルブミンと結合した銅は細胞膜を透過しやすいので全身の組織に銅が沈着することになる。

症状

多くは 20 歳頃に発症する。症状は銅の沈着部位によって異なるが、肝障害と神経症状が主体となる。

  • 肝腫大
  • 劇症肝炎や肝硬変などの肝障害
  • 中枢神経症状
    • 錐体外路症状
      基底核変性による神経症状である。
      • 構音障害
      • 安静時振戦
      • 舞踏病様などの不随意運動
    • 小脳性失調
  • Kayer-Fleischer 輪
    角膜のデスメ膜への銅の沈着による角膜周囲輪である。ほとんどの症例で見られ、本症に特異的な所見である。
  • 溶血性貧血
    酸化した銅が赤血球膜を直接障害すると考えられている。

検査所見

  • 血清セルロプラスミンの著明な低下
    なんらかの原因によってセルロプラスミンの合成が低下するが、その機序は不明である。なおセルロプラスミンは以前では銅の輸送タンパクと信じられてきたが、近年になって否定された。
  • 血清銅低値
  • 肝生検
    組織銅の沈着が見られ、確定診断となる。
  • 頭部 MRI 所見
    大脳基底核に変性が見られる。

合併症

Fanconi 症候群

病理所見

Alzheimer II 型 glia の出現
astrocyto の核が腫大し、核の輪郭は明瞭で中央部が明るく抜けた状態。

治療

  • キレート療法
    銅キレート剤である D-ペニシラミン D-Penicillamine を投与する。
  • 肝移植
    劇症肝炎に発展した場合の第 1 選択である。
  • 血漿交換療法

23.4 肝性ポルフィリン症 hepatic porphyria

典拠:最新内科学大全:核酸・蛋白・ポルフィリン代謝異常 [47, p.289]

概念

ポルフィリンの過剰産生が主に肝臓で行なわれるもの。赤血球中のポルフィリンは増加しない。 肝細胞におけるヘム生合成の障害は認められるが、赤芽球では異常を認めない。したがって貧血を生じない。

分類

  • 急性間歇性ポルフィリン症
    急性発症時に神経症状が見られる点が特徴的である。これはポルフィリン前駆体の蓄積に起因する。
  • 晩発性皮膚ポルフィリン症
    神経症状はなく、もっぱら光線過敏症が前景に立つ点が特徴的である。

症状

骨髄性ポルフィリン症が光線過敏症を呈することが多いのに対して、肝性ポルフィリン症では精神神経症状が前景に立つものが多い。

23.4.1 急性間歇性ポルフィリン症 acute intermittent porphyria, AIP

典拠:MorningReport [27, p.345] ,
典拠:STEP 代謝・内分泌 1 版 [81, p.96] ,
典拠:最新内科学大系:核酸・蛋白・ポルフィリン代謝異常 [47, p.296] ,
典拠:標準皮膚科学 5 版 [74, p.298]

概念

PBGD の活性低下により生じる、急性肝性ポルフィリン症の代表であり、常染色体優性遺伝を示す。蓄積されるのはポルフィリンではなくポルフィリン前駆体のみであるので、光線過敏症は生じない点が他のポルフィリン症と異なる特徴である。

病態生理

ミトコンドリアにおける PBG deaminase(PBGD) の活性低下によりポルフィリン前駆体である PBG とアミノレブリン酸 ALA が蓄積する。ポルフィリンが蓄積されるわけではないので光線過敏症は来たさないが、ALA は GABA と構造が類似しているため GABA と競合して神経症状を生じる。

症状

低栄養状態、アルコールや薬剤 (ステロイド・バルビツール系) などの摂取が発症の契機となることが多い。光線過敏症はなく、かわって神経症状が前景に立つ点が特徴である。

  • 自律神経症状
    • 腹痛
      全例において腹部自律神経障害に起因する、間歇性の腹痛を生じる。
    • 不整脈
  • 精神神経症状
    失見当識・ヒステリー様症状・不眠症などを呈する。
  • 末梢神経症状
    軸索変性によって主に運動ニューロンが障害され、四肢麻痺を呈する。
    • 深部腱反射の減弱
  • ポートワイン尿
    尿中に蓄積された PBG に起因する。

検査所見

  • 尿中 PBG および ALA 高値
    • Watson-Schwartz テスト
      アルデヒド試薬を用いて尿中ポルホビリノーゲン PBG を検出する。
  • 低ナトリウム血症
    合併した SIADH に起因する。
  • 赤血球での PBGD の活性低下

23.4.2 晩発性皮膚ポルフィリン症 porphyria cutanea tarda, PCT2

典拠:最新内科学大系:皮膚の疾患 [44, p.186] ,
典拠:標準皮膚科学 5 版 [74, p.297] ,
典拠:最新内科学大全:核酸・蛋白・ポルフィリン代謝異常 [47, p.299] ,
典拠:Dermatology General Medicine. 4ed [18, p.1872]

概念

肝性ポルフィリン症に属し、皮膚症状が前景に立つもの。中年以降に発症し、急性皮膚症状は少なく、むしろ日光暴露部の色素沈着・水疱が主体となる。

分類

  • I 型
    長期にわたって大量の飲酒を続けた中年男性に好発し、肝障害によって後天的に肝臓での UROD 活性が低下したもの。アルコール以外の誘因としてはエストロゲン・鉄の過剰摂取などが挙げられる。エストロゲン摂取には、避妊薬の常用・閉経後のエストロゲン療法・前立腺癌の抗アンドロゲン療法がある。
  • II 型
    常染色体優性遺伝病であり、肝臓と赤血球の両方においてUROD 活性が低下している。
  • III 型
    常染色体優性遺伝病であり、肝臓の UROD 活性が低下している。

病態生理

ウロポルフィリノーゲンデカルボキシラーゼ uroporphyrinogen decarboxylase, UROD の活性低下に起因する。尿中にウロポルフィリノーゲン I が増加し、糞便中には ISOCOPRO が増加する。

症状

  • 光線過敏症
    日光暴露部に水疱を生じ、容易に破れて瘢痕・色素沈着を来たす。
  • 皮膚脆弱性
  • 顔面の多毛 hypertrichosis

検査所見

  • 尿検査
    尿中のポルフィリン体を検出する。特に尿中ウロポルフィリンの増加 が著しい。また糞便中に ISOCOPRO が出現する点が特徴的である。

23.4. 肝性ポルフィリン症 HEPATIC PORPHYRIA 105

治療

  • 禁酒
  • 瀉血
    鉄の過剰が本症の誘因の一つであるから、血清鉄を減少させる目的で 行なう。
  • 遮光

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