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肝胆膵 30 胆道系の炎症

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→ 肝胆膵系 目次

Chapter 30 胆道系の炎症

典拠:組織病理アトラス [82, p.141]

原因

大腸菌がもっとも多く、腸管から胆汁の流れに逆行して胆道に至る上行性感染に起因する。

種類

  • 胆嚢炎
    • 急性胆嚢炎
    • 慢性胆嚢炎
  • 胆管炎 cholangitis
  • コレステリン沈着症, 胆嚢コレステリン症 cholesterosis
    胆嚢粘膜にコレステロールが沈着する。
  • 原発性硬化性胆管炎 primary sclerosing cholangitis
    肝外胆管壁に線維化が生じ、胆管の狭窄を伴う疾患。

30.1 胆嚢炎 cholecystitis

典拠:ConcisePathology [14, p.666] ,
典拠:Diagnosis And Treatment In Gastroenterology [10, p.670] ,
典拠:組織病理アトラス [82, p.141] ,
典拠:医学生・研修医のための消化器病学 [57, p.310] ,
典拠:最新内科学大系:胆石・胆道癌 [38, p.251]

病因

  • 胆石症
    胆石によって胆嚢内に胆汁が停滞するとともに胆石が胆嚢頸部に嵌頓することが契機となって炎症が生じる。
  • 胆道閉鎖による胆汁の化学的刺激
  • 細菌感染

分類

  • 急性胆嚢炎
    ほとんどが胆石症に合併する。胆道シンチで胆嚢が描出されない。
  • 慢性胆嚢炎
    すべて胆石症に合併する。しばしば胆嚢周囲に膿瘍を形成する。

検査所見

  • 腹部エコー
    本症に対する最も感度の高い検査法である。浮腫を反映して壁が高エコーを呈し、胆嚢の内腔が拡大する。
    • sandwitch sign
      胆嚢壁が浮腫状変化によって三層に見えること。

病理所見

  • 好中球やリンパ球の浸潤とリンパ濾胞の形成
  • 充血が強い
  • ロキタンスキー・アショフ洞 rokitansky-aschoff sinus の形成

治療

  • 胆嚢ドレナージ
  • 体外衝撃波
    炎症の原因となっている胆石を破砕するもの。胆道が開存していることが絶対条件であり、小さい結石でカルシウム含量が低いことが適応 となる。

30.1.1 急性胆嚢炎 acute cholecystitis

典拠:Diagnosis And Treatment In Gastroenterology [10, p.670,p.212] ,
典拠:標準外科学 8 版 [84, p.618] ,
典拠:最新内科学大系:胆石・胆道癌 [38, p.251] ,
典拠:腹部画像診断学 1 版 [89, p.84]

概念

原因

ほとんどが Hartmann’s pouch あるいは胆嚢管に胆石が嵌頓し、濃縮された胆汁が胆嚢粘膜を障害する。

  • 胆石症
    胆石によって胆嚢胆管が閉塞し、濃縮された胆汁が胆嚢粘膜を障害し、急性炎症を生じる。
  • 胆道閉鎖
    総胆管の閉鎖によって膵酵素が逆流し、胆嚢を障害する。

症状

発熱などの炎症症状を伴なう。

  • Murphy 徴候
    右季肋部を圧迫したまま深呼吸させると、痛みのために途中で呼吸が停止する。

  • 腹膜刺激症状

    • 筋性防御
      胆嚢穿孔から腹膜炎に進展したことを示唆する。

検査所見

  • 腹部エコー
    本症に対する最も感度の高い検査法である。浮腫を反映して壁が高エコーを呈し、胆嚢の内腔が拡大する。
    • 胆嚢の腫大
    • 胆石の胆嚢頸部嵌頓像
    • 胆嚢内浮遊物 debris
    • 胆嚢周囲液体貯留 fluid collection
  • 腹部単純 X 線所見
    • 胆道内ガス像 pneumobilia
      胆嚢から隣接臓器への穿通 (内胆汁瘻) が起こると、胆道内に腸管内ガスが逆流するために、胆道内にガス像を認める。
  • 胆道シンチグラフィー
    胆嚢が描出されない。

合併症

  • 気腫性胆嚢炎 emphysematous cholecystitis
    ウェルシュ菌 clostridium perfringens などのガス産生菌の感染によって胆嚢壁内にガス像が出現するもの。壊疽性胆嚢炎に発展すると穿孔して敗血症に移行しやすい。糖尿病に合併しがちである。
  • 汎発性腹膜炎
    胆汁が腹腔内に散布されて生じる。
  • 急性膵炎

治療

腹膜炎に進展したものは手術適応となり、開腹術による胆嚢摘出術が原則 である。

  • 腹腔内ドレナージ

気腫性胆嚢炎 emphysematous cholecystitis

典拠:キーワード:単純 X 線写真読影 1 版 [66, p.252] ,
典拠:腹部画像診断学 1 版 [89, p.85]

概念

ウェルシュ菌 clostridium perfringens などのガス産生菌の感染によって胆嚢壁内にガス像が出現するもの。壊疽性胆嚢炎に発展すると穿孔して敗血症に移行しやすいため、早期治療を要する。 糖尿病に合併しがちである。

検査所見

少量のガス像の検出には単純写真よりも CT が有用である。

  • 単純写真所見
    胆嚢の形状に一致してガス像が認められる。

30.1.2 慢性胆嚢炎 chronic cholecystitis

典拠:Lachman Case Studies Anatomy. 1ed [30, p.200] ,
典拠:標準外科学 8 版 [84, p.619]

概念

胆石症に合併した胆嚢炎であり、しばしば胆嚢周囲に膿瘍を形成する。

原因

  • 胆石症

病態生理

胆嚢腺筋症, 胆嚢腺筋腫症 adenomyomatosis
胆嚢壁が肥厚し、Rokitansky-Aschoff 洞の筋層内への侵入を認める。

検査所見

  • 腹部エコー
    • sandwitch sign
      胆嚢壁の浮腫状変化によって壁内に透明帯 sonolucent layer が出現し、壁が三層に見えること。
    • 陶器様胆嚢 porcelain gallbladder
      慢性炎症によって胆嚢壁全体に石灰化がみられるものであり、慢性胆嚢炎の末期を表わす。

治療

胆嚢腺筋症を合併した場合は胆嚢癌との鑑別が困難であるため、原則として胆嚢摘出術を行なう。

胆嚢腺筋症, 胆嚢腺筋腫症 adenomyomatosis

典拠:腹部画像診断学 1 版 [89, p.99]

概念

胆嚢壁が肥厚し、Rokitansky-Aschoff 洞の形成を特徴とする。

検査所見

  • 経口胆嚢造影
  • 腹部エコー

30.2 胆管炎 cholangitis

典拠:CMDT2003 [26, p.661] ,
典拠:標準外科学 8 版 [84, p.619]

症状

  • charcot の三徴
    発熱・腹痛・黄疸
  • reynolds の 五徴
    charcot の三徴に加えて、ショック症状・意識障害。

治療

まず減圧する。

30.2.1 自己免疫性胆管炎 autoimmune cholangitis, AIC

典拠:Diagnosis And Treatment In Gastroenterology [10, p.504]

検査所見

  • 抗核抗体の存在と抗ミトコンドリア抗体の不在

原発性硬化性胆管炎 primary sclerosing cholangitis, PSC

典拠:Diagnosis And Treatment In Gastroenterology [10, p.683] ,
典拠:NIM 消化器病学 4 版 [60, p.610] ,
典拠:ハリソン内科学 [6, p.1515]

概念

20~50 歳代の男性に好発する、原因不明の胆管炎である。胆管壁の肥厚性 変化によって胆管が狭窄し、進行性の胆汁鬱滞を呈する。

原因

潰瘍性大腸炎やクローン病に合併することが多く、自己免疫疾患であることが示唆されている。動物実験の結果からは、大腸の炎症性病変から吸収された細菌性のペプチドやエンドトキシンが炎症性サイトカインを増加させ、胆管を損傷しているとする仮説もある。

  • 自己抗体
    pANCA が関与している可能性がある。

症状

  • 消長する黄疸
  • 痛痒感

検査所見

  • ERCP 所見
    • 数珠状 beaded appearance
      狭小化した肝外胆管像ならびに肝内胆管の狭窄および拡張像がみられる。
  • 胆道系逸脱酵素の上昇 なかでも ALP が基準値の 2 倍以上に上昇する点が本症に特徴的である。

合併症

なお原発性胆汁性肝硬変ほどには自己免疫疾患の合併はない。

  • 潰瘍性大腸炎
  • 肝硬変
  • 胆嚢癌
  • シェーグレン症候群

治療

  • 胆道ドレナージ
  • 肝移植
    本症は肝移植の最もよい適応の一つである。

30.2.2 急性閉塞性化膿性胆管炎, 急性化膿性胆管炎 acute obstructive suppurative cholangitis, AOSC

典拠:標準外科学 8 版 [84, p.619] ,
典拠:医学生・研修医のための消化器病学 [57, p.312],
典拠:最新内科学大全:胆石・胆道癌 [38, p.21] ,
典拠:NEW 外科学 2 版 [64, p.642]

概念

胆道閉塞時において胆管に鬱滞した胆汁の感染による胆管炎であり、敗血症によるエンドトキシン・ショックを合併し、死亡率は 40~70%にも達する。

原因

胆汁鬱滞が原因となる。

  • 胆管結石
  • 悪性腫瘍による胆管閉塞
    膵頭部癌・十二指腸乳頭部癌・胆管癌などが原因となる。

病態生理

鬱滞した胆汁に消化管から上行性に、大腸菌やクレブシェラなどグラム陰性桿菌を起炎菌とした感染が成立する。胆道内圧が上昇すると細菌に感染 した胆汁が肝静脈へ逆流し、敗血症をもたらす。

  • エンドトキシン・ショック
    主にグラム陰性桿菌が死滅して内毒素が血中に放出されるとまずこれが白血球を破壊する。白血球が破壊されるとヒスタミンやセロトニンなどの血管に障害を与える化学物質が遊離される。これら化学物質の作用で毛細血管拡張や血液凝固が生じ、全身的な循環不全を招く。

症状

  • Charcot の三徴
    発熱・黄疸・腹痛を呈する。
  • Reynolds の五徴
    Charcot の三徴に加えて、本症では意識障害およびショック症状を呈する。

検査所見

  • 白血球増多
  • 胆道系逸脱酵素上昇
    特に ALP が著明に上昇する。
  • 血小板減少
    DIC の合併を示唆する。

治療

緊急にショック対策と胆道ドレナージを行なう必要がある。加えて抗生剤投与や DIC の治療を行なう。

  • 胆道ドレナージ
    感染胆汁を十分に吸引する。
    • 経皮経肝的胆道ドレナージ percutaneous transhepatic biliary drainage, PTBD
    • 内視鏡的胆道ドレナージ endoscopic biliary drainage, EBD
      経鼻的に内視鏡を Vater乳頭に挿入し、胆管の減圧を図る。
  • 内視鏡的乳頭括約筋切開術
    Vater乳頭部への胆石の嵌頓が原因の場合に特に有効であり、内視鏡的に乳頭括約筋を切開して嵌頓を解除する。
  • 開腹術
    総胆管を切開し、Tチューブを留置する。全身状態が保たれれば適応となる。

30.3 胆道ジスキネジー

典拠:NIM 消化器病学 4版 [60, p.574]

概念

胆汁流出装置 (オッデイ筋、胆嚢、胆道) の機能障害をいい、胆道系に器質的な異常を認めない。食事や CCK によるオッデイ括約筋の異常反応によるものと考えられている。

分類

  • 緊張亢進型
  • 運動亢進型
  • 緊張低下型

検査所見

胆道系に器質的な異常を認めないことが必要である。


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