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血液学 14 鉄代謝異常による貧血

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→ 血液学 目次

Chapter 14 鉄代謝異常による貧血

14.1 鉄代謝 iron metabolism

典拠:ConcisePathology [13, p.10] ,
典拠:エッセンシャル血液病学 [53, p.67] ,
典拠:Harrison13 [8, p.1721] ,
典拠:医学生・研修医のための血液病学 [45, p.24] ,
典拠:NIM 血液病学 4版 [48, p.28] ,
典拠:標準臨床検査医学 2版 [63, p.206]

概念

体内には 3g 程度存在する。一日で吸収される鉄量は 1mg 程度である。

鉄代謝の過程

  • 鉄の吸収
    十二指腸および空腸上部から吸収される。また胃酸中の塩酸は 3価鉄を溶解したりキレートを形成して鉄の吸収を促進する作用を持つ。
  • 鉄の輸送
    トランスフェリンによって血中を輸送される。
  • 鉄の貯蔵
    貯蔵鉄はフェリチンあるいはヘモシデリンとして主に肝臓に存在する。ヘモシデリンとは、「主としてヘモグロビンの鉄に由来し、マクロファージに貪食された赤血球やヘモグロビンがリゾソームで分解される過程で生じたもの」。フェリチン鉄がヘム合成に利用されるのに対してヘモシデリン鉄は利用されないので、ヘモシデリン鉄が体内の貯蔵鉄量を反映している。

食物から摂取する鉄は 2価もしくは 3価の鉄として有機化合物や水酸基と結合して存在する。3価鉄は吸収しにくいため胃液で還元されて 2価の鉄イオンとして十二指腸で吸収される。吸収された鉄は 3価鉄に酸化されて一部はフェリチンとなり、残りは血液中に運ばれ、ここでトランスフェリンと結合して造血組織に輸送される。

鉄代謝の指標

  • 総鉄結合能 TIBC
    総鉄結合能とは、血漿 100ml あたりのトランスフェリンと最大限結合しうる鉄総量のこと。不飽和鉄結合能 UIBC とは、鉄と結合していないトランスフェリンの量を指す。また血清鉄とは血清中でトランスフェ リンと結合している鉄量のこと。 総鉄結合能 TIBC = 血清鉄 SI + 不飽和鉄結合能 UIBC

14.1.1 鉄の貯蔵

典拠:Harper [27, p.443]

概念

貯蔵鉄はフェリチンあるいはヘモシデリンとして主に肝臓に存在する。
ヘモシデリンとは、「主としてヘモグロビンの鉄に由来し、マクロファージ に貪食された赤血球やヘモグロビンがリゾソームで分解される過程で生じたもの」。フェリチン鉄がヘム合成に利用されるのに対してヘモシデリン鉄は利用されないので、ヘモシデリン鉄が体内の貯蔵鉄量を反映している。

  • フェリチン ferritin
    フェリチンは鉄を結合するタンパクであり、腸管から吸収された鉄は肝臓においてまずフェリチンと結合して貯えられる。特に鉄欠乏性貧血にて真っ先に減少するのが特徴である。
  • ヘモシデリン hemosiderin

フェリチン ferritin

典拠:検査のポイント [46, p.202] ,
典拠: 病態生理できった内科学:血液疾患 2 版 [47, p.25] ,
典拠: 最新内科学大全:貧血・多血症 [35, p.64]

概念

フェリチンは鉄と結合するタンパクである。腸管から吸収された鉄は肝臓 においてまずフェリチンと結合して貯えられる。

評価

  • フェリチン減少
    特に鉄欠乏性貧血にて真っ先に減少するのが特徴である。
  • フェチリン増加
    • 成人 Still 病
    • 血球貪食症候群
      網内系で増加した単球やマクロファージがフェリチンを多く含んでいるからである。
    • 無効造血
      • 再生不良性貧血
      • 骨髄異形成症候群
    • 二次性貧血
    • ヘモクロマトーシス

14.2 鉄欠乏性貧血 iron deficiency anemia

典拠:CMDT2003 [25, p.469] ,
典拠:Pathophysiology [15, p.108] ,
典拠:Concise Pathology [13, p.385] ,
典拠:エッセンシャル血液病学 5 版 [54, p.49] ,
典拠:NIM 血液病学 4版 [48, p.35] ,
典拠: Harrison13 [8, p.1723] ,
典拠:最新内科学大全:貧血・多血症 [35, p.85]

概念

生体内の鉄欠乏により、ヘモグロビン合成が障害されて起こる低色素性小球性貧血である。

原因

慢性の出血によって体内の鉄が欠乏することが多い。 * 鉄の喪失
妊娠および授乳によるものや、出血による喪失、あるいは血管内溶血によって鉄需要が増大する。 * 消化管出血
悪性腫瘍・消化管潰瘍や食道裂孔ヘルニアなど。 * 血管内溶血 * 月経 * 鉄摂取不足や吸収不全による供給不足
鉄は主に十二指腸から吸収されるので、胃腸障害や腸切除によって鉄吸収が障害された場合に起こりうる。また胃液中の塩酸は三価鉄を二価鉄に還元し、吸収しやすくする作用がある。 * 鉄需要の増大
乳幼児や月経が開始する思春期は成長が急激で、鉄需要が供給に追いつかないことがある。乳児は生後 3ヶ月以降から鉄需要が増大するため、離乳遅延で容易に鉄が欠乏する。

病態生理

まず貯蔵鉄が欠乏する。これは血清フェリチンの低下で示される。つぎに潜在性鉄欠乏が起こり、血清鉄の低下が現れる。そしてヘモグロビン量が低下して鉄欠乏性貧血となる。

  1. 貯蔵鉄欠乏
    まず血清フェリチンが低下する。
  2. 潜在性鉄欠乏
    血清フェリチンのみならず血清鉄も低下するが、ヘモグロビンや赤血球数は正常である。代償的に鉄と結合していないトランスフェリンの量である UIBC が上昇する。
  3. 鉄欠乏性貧血
    血清フェリチンや血清鉄のみならずヘモグロビンや赤血球数も低下 する。

症状

貧血による酸素欠乏症状と酵素鉄タンパクの減少による皮膚症状に大別される。

  • 皮膚粘膜症状
    • 匙状爪 spoon nail
      爪が扁平化し、上に反り返っている所見をいう。回転の速い爪の細胞の増殖が不十分となるために爪が変形する。
    • 舌炎や口角炎
  • 異食症 pica を伴うこともある

なお、鉄の吸収および代謝異常に起因し、鉄欠乏性貧血・口内炎・嚥下困難を3主徴とするものを特に Plummer-Vinson 症候群と呼ぶ。

検査所見

  • 血清フェリチン低下が初発である。
    まず貯蔵鉄の欠乏が生じるが、これは検査上は血清フェリチンの低下で示される。血清フェリチンの低下は、サラセミアや鉄芽球性貧血などの他の小球性貧血あるいは出血性貧血との鑑別診断に役立つ。
  • UIBC は上昇する
    UIBC とは鉄と結合していないトランスフェリンの量であり、血清鉄が減少するとこれを代償するためにトランスフェリンが増加する。
  • 血清鉄の低下
  • ヘモグロビン合成低下による小球性貧血
    MCV の低下として現れる。
  • TIBC は高値となる
    総鉄結合能 TIBC は 血清鉄 SI と 不飽和鉄結合能 UIBC の和である。
  • 赤血球粒度分布幅 red cell distribution width, RDW の増加
  • 網赤血球減少

病理所見

  • 末梢血所見
    薄く小さな赤血球 leptocyte が増加する。血小板の増加もしばしば見られる。
  • 骨髄所見
    骨髄では赤芽球が増加する。

治療

  1. 鉄欠乏の原因に対する治療が最優先
    出血性の場合は特に出血源を特定することが重要である。
  2. 原則として経口鉄剤を投与
    消化管粘膜の鉄吸収は鉄不足量に応じて増減するため、鉄の吸収過剰を回避できるからである。
  3. 例外的に静脈投与
    鉄不足量を計算して、投与する。

irondeficit = (2.7 × (16 − Hb) + 17) × weight[kg]

  1. 輸血
    原因が鉄の欠乏のみであれば原則として行なわない。

栄養療法としては鉄分の多いほうれん草やレバーを摂取させる。なお治療が成功するとまず網赤血球の増加となって現れる。

14.3 鉄芽球性貧血 sideroblastic anemia

典拠:Clinical Diagnosis Management Laboratory Methods. 20ed [21, p.580] ,
典拠:組織病理アトラス [71, p.448] ,
典拠:ConcisePathology [13, p.388] ,
典拠:病態生理できった内科学:血液疾患 2 版 [47, p.37] ,
典拠:三輪 - 血液病学 2版 [50, p.590] ,
典拠:血液内科学 1版 [59, p.156] ,
典拠:血液細胞アトラス 4 版 [65, p.145]

概念

骨髄鉄染色標本で鉄顆粒が赤芽球の核を環状に取り込んだ環状鉄芽球の増加が見られる貧血の総称である。50 歳以上の中高年に多い。

分類

  • 先天性
  • 後天性
    • 特発性
      • 環状鉄芽球を伴う MDS
    • 二次性
      鉛中毒やアルコール中毒が原因となる。

原因

ミトコンドリア内でのヘム合成の障害に起因する。具体的にはポルフィリン環合成の異常、あるいはポルフィリン環への鉄の転入異常による。

  • ビタミンB6 欠乏
    ビタミンB6 はアミノ酸代謝と糖代謝を連携する重要な補酵素である。
  • 薬物
    INH が代表的である。
  • アルコール
    アルコールはビタミン B6 の活性化を阻害するから。
  • 慢性炎症
    機序は不明である。

病態生理

ヘム合成が障害されるが、鉄は利用されないので蓄積し、これが核周囲のミトコンドリア内に沈着する。

  • 小球性貧血

症状

  • 肝前性黄疸

検査所見

  • 検血所見
    • 小球性貧血
    • 血清鉄増加
    • TIBC の増加
    • 血清フェリチン増加
      鉄欠乏性貧血との鑑別に有効である。
  • 骨髄穿刺
    赤芽球型細胞の増加と鉄染色標本にて環状鉄芽球の増加が見られる。

病理所見

  • 末梢血所見
    • 二相性 dimorphism
      大球性赤血球と低色素性小球性赤血球の 2 種類の赤血球が混在する現象であり、鉄芽球性貧血もしくは鉄欠乏性貧血を伴なう巨赤芽球性貧血で見られる。
  • 骨髄所見
    赤芽球が二核や過形成を示す。

治療

  • ビタミン B6, ピリドキシン pyridoxine therapy

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