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medical praxis - web版 医学ノート - 国家試験対策

学問の上で大いに忌むべきは、したり止めたりである。したり止めたりであれば、ついに成就することはない。

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血液学 17 骨髄機能異常による貧血

血液学 血液学-4.貧血
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→ 血液学 目次

Chapter 17 骨髄機能異常による貧血

17.1 再生不良性貧血 aplastic anemia

典拠:Beck:Hematology [1, p.63] ,
典拠:Concise Pathology [13, p.380] ,
典拠:NIM 血液病学 4 版 [48, p.127] ,
典拠:医学生・研修医のための血液病学 [45, p.16] ,
典拠:エッセンシャル血液病学 5 版 [54, p.56] ,
典拠:三輪 - 血液病学 2版 [50, p.462] ,
典拠:最新 内科学大全:貧血・多血症 [35, p.365]

概念

造血幹細胞の障害による骨髄低形成であり、貧血をはじめとして抹消での汎血球減少による出血傾向や易感染性を呈する。

分類

  • 先天性再生不良性貧血
    • Fanconi貧血
      再生不良性貧血を呈する先天性の骨髄形成不全症である。遺伝形式は常染色体劣性遺伝で、汎血球減少のほか骨格や腎臓の先天性奇形を特徴とする。また悪性腫瘍との合併が多く、染色体が脆弱であるため特に白血病化の危険が高い。
  • 獲得性
    • 特発性
    • 二次性
      • 感染性再生不良性貧血
        特にウイルス性肝炎や粟状結核症に合併する。
      • 薬剤性再生不良性貧血
        ベンゼン (特にクロラムフェニコール) や抗癌剤によるもの。 量依存性であり、一定量以上では必ず発症する。
  • 特殊型
    • 再生不良性貧血-発作性夜間ヘモグロビン尿症症候群
      再生不良性貧血の経過中に発作性夜間ヘモグロビン尿症を合併するもの。

病因

多くは原因不明であるが、なんらかの免疫学的機序が想定されている。

  • 免疫を介した要因
    • 感染
      特にウイルス性肝炎や粟状結核症に合併する。
    • GVHD
      移植に伴う GVHD においてドナー側の T細胞が造血幹細胞を傷害して再生不良性貧血を合併する。
  • 直接毒性の要因
    • 放射線や化学療法などの医原性
    • ベンゼンとその派生物であるクロラムフェニコール
  • 造血幹細胞の異常
    経過中に発作性性夜間血色素尿症・骨髄異形成症候群・急性骨髄性白血病に移行する例がある。
  • 先天性
    • Fanconi 貧血

症状

  • 貧血症状
  • 易感染性
  • 出血傾向
    • 紫斑

なお脾腫は生じない。

検査所見

  • 汎血球減少 pancytopenia
    白血球のなかでは好中球の減少が顕著で、リンパ球は相対的に増加を示す。
  • 血清鉄の増加と不飽和鉄結合能 UIBC の低下
    これは造血が停止しているために、鉄が蓄積してかつ利用率が低下したことを意味する。血清鉄の増加に反応してトランスフェリンの合成が抑制されて、UIBC が低下する。なお血清鉄飽和率も高値を示す。
  • エリスロポエチン高値
  • 骨髄穿刺では骨髄低形成
    骨髄のほとんどが脂肪で置換されている。

病理所見

  • 骨髄所見
    • 骨髄低形成
      骨髄は低形成で、脂肪変性を生じて骨髄組織が脂肪に置換されて いる (脂肪髄)。ただし異常細胞を認めない点が白血病と異なる。
  • 抹消血所見
    • 汎血球減少 pancytopenia
      網赤血球も減少するが、白血球減少は主に顆粒球の減少によるものであり、相対的にリンパ球は増加する。

治療

軽症例にはタンパク同化ホルモン・ステロイドパルス療法などを行ない、重症例には免疫抑制療法や骨髄移植を行なう。

  • 骨髄移植
    重症例での第 1 選択となる。
  • タンパク同化ステロイド療法
    タンパク同化ステロイドであるアンドロゲンにはエリスロポエチン産生を増加させ、赤芽球系・顆粒系前駆細胞の増殖を刺激するなどの造血促進作用があるため。ただし重症例では無効である。
  • 免疫抑制療法
    抗胸腺細胞グロブリン ATGAM やシクロスポリンA を投与する。中等から重症の症例が適応となる。
  • 摘脾 splenectomy
    脾腫がないのに摘脾というのはいかにも不思議であるが、血小板輸液に備えるための処置である。

17.1.1 Fanconi 貧血 congenital aplastic anemia,Fanconi syndrome

典拠:Beck: Hematology [1, p.69] ,
典拠:三輪 - 血液病学 2版 [50, p.464] ,
典拠:標準小児科学 3 版 [60, p.463] ,
典拠:Oski: Pediatrics.3ed [12, p.1459]

概念

再生不良性貧血を呈する先天性の骨髄形成不全症である。遺伝形式は常染色体劣性遺伝で、汎血球減少のほか骨格や腎臓の先天性奇形を特徴とする。 また悪性腫瘍との合併が多く、染色体に脆弱性があるため特に白血病化の危険が高い。

病態生理

DNA 修復能に問題があり、染色体が脆弱である。

症状

症状は 10 歳頃までに発症する。

  • 骨格の奇形
    特に第 1 指の欠損や低形成が多い。
  • 低身長
  • 皮膚症状
    • 点状出血
    • 色素沈着
  • 腎臓の先天性奇形
    馬蹄腎などを生じる。

検査所見

  • 汎血球減少

治療

  • 骨髄移植

17.2 骨髄異形成症候群 myelodysplastic syndrome, MDS

典拠:病態生理できった内科学:血液疾患 2版 [47, p.121] ,
典拠:組織病理アトラス [71, p.447] ,
典拠:Beck:Hematology [1, p.401] ,
典拠:NIM 血液病学 4 版 [48, p.136] ,
典拠: 医学生・研修医のための血液病学 [45, p.115] ,
典拠:三輪 - 血液病学 2版 [50, p.471],
典拠:最新内科学大全:白血病 [34, p.273] ,
典拠:最新内科学大全:貧血・多血症 [35, p.384] ,
典拠:エッセンシャル血液病学 5 版 [54, p.129] ,
典拠:血液細胞アトラス 4 版 [65, p.295]

概念

原発性に造血幹細胞に質的異常があって有効な血球の産生が行なわれない状態である。障害を受けた多能性幹細胞が単クローン性に増殖し、正常造血を駆逐する結果、造血障害をもたらすもので、白血病の前段階と捉えら れる。ただし程度は著しくなく、貧血などの所見のみが臨床上問題となることが多い。
しばしば急性骨髄性白血病との鑑別が困難であるが、FAB 分類では白血病細胞が 30%未満もしくは赤芽球が 50%以上の場合を骨髄異形成症候群 MDS とする。なお 1999 年の WHO 分類では芽球比率が20%以下を基準とした。

FAB 分類

  • 不応型貧血 refractory anemia,refractory cytopenia, RA
  • 環状鉄芽球を伴う不応性貧血 refractory anemia with ring sideroblasts, RARS
    環状鉄芽球の出現と赤血球系の無効造血が特徴である。
  • 過剰な芽球を伴う不応性貧血 refractory anemia with excess of blasts , RAEB
    芽球の存在が特徴。しばしば白血病に発展する。
  • 急性転化を来たした過剰な芽球を伴う不応性貧血 RAEB in transformation
  • 慢性骨髄単球性白血病 chronic myelomonocytic leukemia, CMML

病態生理

  • 骨髄の過形成・異形成
    有核細胞数が増加し、骨髄細胞において染色体異常が認められる。
  • 骨髄における三血球系 (赤血球系・顆粒球系・血小板系) における形態異常
    • 巨核球
    • 過分節好中球
  • 無効造血
    • 抹消血における汎血球減少 pancytopenia
      MDS クローンの血球は形態異常のみならず機能異常があり、骨髄内で成熟せずに死滅しやすい (無効造血) ため、汎血球減少症が生じる。
    • フェリチン高値
      赤血球鉄利用率低下を反映している。
  • 半数に染色体異常がある
    なかでも 5q- が代表的である。

合併症

急性骨髄性白血病に移行しやすく、その場合は治療抵抗性になりやすい。

病理所見

  • 骨髄所見
    • 巨核球
    • 過分節好中球
  • 末梢血所見
    末梢に赤芽球・巨大血小板が出現する。
    • 赤血球異常
      赤血球大小不同症・赤芽球・好塩基性斑点を有する赤血球など出現する。なかでも FAB 分類は赤芽球の末梢血への出現を重視して いる。

治療

不可逆的に進行し、急性白血病化と骨髄不全による死亡が多いため予後不良である。根治的治療は骨髄移植であるが高齢者が多いので移植の適応となる場合は少ない。

  • 対症療法が主体となる
    血球減少に対しては成分輸血やコロニー刺激因子 CSF の投与を行う。
  • 骨髄移植
    前処理で異常クローン細胞を十分に撲滅してから骨髄移植を行なう。 ただし本疾患は高齢者が多いので移植の適応となる場合は少ない。

17.3赤芽球癆 pure red cell aplasia, PRCA

典拠:病態生理できった内科学:血液疾患 2 版 [47, p.49] ,
典拠:Beck: Hematology [1, p.73] ,
典拠:Concise Pathology [13, p.381] ,
典拠:医学生・研修医のための血液病学 [45, p.23] ,
典拠:NIM 血液病学 4 版 [48, p.131] ,
典拠: 三輪 - 血液病学 2版 [50, p.543] ,
典拠: エッセンシャル血液病学 5 版 [54, p.59]

概念

赤血球系造血前駆細胞の障害によって赤血球の産生だけが障害されて起こる貧血である。骨髄において赤芽球が消失し、抹消では網赤血球が減少するが、白血球と血小板は正常範囲にある。

分類

  • 先天性
    • Diamond-Blackfan 症候群
      先天性の赤芽球癆であり、生後まもなくして貧血を発症し、輸血 を受けなければ鬱血性心不全・脾腫などを招く。
  • 後天性
    • 急性赤芽球癆
      ウイルス感染や鎌状赤血球症などに続発する。特に伝染性紅斑で の低形成発作が有名である。
    • 慢性赤芽球癆

病態生理

後天性ではしばしば胸腺腫を合併するので、自己免疫性であると考えられる。

検査所見

  • 検血所見
    • 正球性貧血
    • 網赤血球の減少
  • 血清鉄の減少
  • 骨髄所見
    赤芽球が極めて減少している。本来ならば骨髄における顆粒球系と赤芽球系の比率は 2:1 程度である。

合併症

  • 胸腺腫
    後天性で合併することがあり、本症が自己免疫性であることを示唆する。

治療

急性赤芽球癆に対しては原疾患の治療が優先する。

  • 薬物療法
    免疫抑制が基本である。
    • 副腎皮質ホルモン
    • シクロスポリン
    • 抗胸腺細胞グロブリン anti thymocyte globulin , ATG
  • 胸腺摘出術
    胸腺腫合併例が適応となる。

17.3.1 Diamond-Blackfan 症候群, 先天性赤芽球癆 congenital pure red cell aplasia

典拠:標準小児科学 3 版 [60, p.463] ,
典拠:Beck: Hematology [1, p.558]

概念

先天性の赤芽球癆である。生後まもなくして貧血を発症し、輸血を受けなければ鬱血性心不全・脾腫などを招く。

症状

  • 肝脾腫

合併症

なお後天性赤芽球癆と異なり、本症では胸腺腫を合併しない。

  • 心奇形
  • 口蓋裂
  • 白血病

治療

ステロイド剤が著効を示す。

17.3.2 急性赤芽球癆 pure red cell aplasia acute type

典拠:Beck: Hematology [1, p.73]

概念

主にパルボウイルス B19 感染に続発する赤芽球癆である。特に伝染性紅斑での低形成発作が有名である。

原因

パルボウイルス B19 は DNA ウイルスであり、赤芽球の核に感染して複製を行なう。このため、溶血性貧血などで赤芽球が過形成を示す病態で発症 しやすい。 * ウイルス感染
パルボウイルス B19 をはじめとして、インフルエンザや肝炎ウイルスなどが病原体となる。 * 溶血性貧血
基礎疾患としては遺伝性球状赤血球症をはじめ、薬剤性溶血性貧血や鎌状赤血球などがある。

検査所見

  • 正球性貧血
  • 網赤血球減少
  • 骨髄所見
    回復初期には代償性に増殖した巨大な前赤芽球が多数見られる。

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