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medical praxis - web版 医学ノート - 国家試験対策

学問の上で大いに忌むべきは、したり止めたりである。したり止めたりであれば、ついに成就することはない。

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血液学 21 慢性白血病 chronic leukemia

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→ 血液学 目次

Chapter 21 慢性白血病 chronic leukemia

典拠:Beck: Hematology [1, p.412] ,
典拠:組織病理アトラス [71, p.444] ,
典拠:Hematology NMS [2, p.184]

概念

発症が緩慢で、各成熟段階の白血球がピラミッド型に見られる白血病。
生体の調節能から逸脱し自律性増殖を示すという点で確かに腫瘍であっても、分化・成熟能を保持している。これゆえに慢性白血病では各成熟段階の白血球がピラミッド型に見られる。
特徴としては

  • 比較的成熟した白血球が増加する
  • 難治性
    分化細胞は細胞分裂能が低いため、分裂中の細胞を標的とした化学療法が功を奏さない。

分類

  • 慢性骨髄性白血病
    • 成人型慢性骨髄性白血病, 標準型
    • 若年型慢性骨髄性白血病 juvenile CML
  • 慢性リンパ性白血病
    • 有毛細胞白血病 hairy cell leukemia, HCL
      B細胞由来の慢性リンパ性白血病。
    • 皮膚 T 細胞リンパ腫
  • 特殊型
    • 成人T細胞白血病の慢性型

21.1 慢性骨髄性白血病 chronic myelogenous leukemia, CML

典拠:Beck: Hematology [1, p.412] ,
典拠:組織病理アトラス [71, p.445] ,
典拠:医学生・ 研修医のための血液病学 [45, p.104] ,
典拠:エッセンシャル血液病学 5 版 [54, p.133] ,
典拠:三輪 - 血液病学 2版 [50, p.1030] ,
典拠:最新内科学大系:白血病 [34, p.145] ,
典拠:NIM 血液病学 4 版 [48, p.177] ,
典拠: 血液内科学 1 版 [59, p.252]

概念

全能性造血幹細胞にフィラデルフィア染色体が生じ、リンパ球系をも含む 全血球系に単クローン性の異常造血が生じるが、その増殖の主体は顆粒球系にあるものをいう。
多能性幹細胞が分化能をある程度保ちながら腫瘍化することによって各種成熟段階の顆粒球および血小板が増加するという特徴を持つ。成人に多く、骨髄移植以外の有効な治療法が今だ確立されていない。

病因

  • フィラデルフィア染色体 philadelphia chromosome
    t(9:22) の転座であり、本症の 90%以上の症例で陽性となる。すなわち 9 番染色体上の発ガン遺伝子 c-abl が 22 染色体上の bcr 遺伝子に移動し、これと結合する (相互転座) すると bcr-abl 融合遺伝子が形成され、これがチロシンキナーゼ活性を高めて細胞分裂を促進する。

分類

  • 成人型慢性骨髄性白血病, 標準型
  • 特殊型
    • 若年型慢性骨髄性白血病 juvenile CML
      フィラデルフィア染色体は陰性となる。そして不思議なことに、フィラデルフィア染色体が陰性のほうが予後が悪い。
    • フィラデルフィア陰性 CML
      フィラデルフィア染色体は陰性だが、それと同様の効果を持つ bcr 遺伝子再構成がみられる。

病期進行

多くは 3 年ほどの慢性期を経たあとで急激に急性白血病に近似した病像へ転換する (急性転化)。

  1. 慢性期
    顆粒球の増加と Ph染色体の存在が確認されるが、臨床症状には乏しい。
  2. 移行期 骨髄芽球の増加する時期であり、骨髄移植しか治療はない。
  3. 急性転化 blastic crisis,BC
    ほとんどが骨髄芽球に置換され、骨髄移植しか治療はない。このときしばしば骨髄穿刺で dry tap を呈し、新たな染色体異常も見られる。
    • リンパ性急性 転化 lymphoid crisis
      顆粒球主体からリンパ球性へと phenotype が変化したものをいう。TdT 陽性となる。
    • 骨髄性急性転化 myeloid crisis
    • 混合型急性転化 mixed crisis

症状

慢性期には脾腫以外の症状に乏しいことが多い。

  • 巨大脾腫を触知する
    白血病細胞の脾内浸潤と増殖によって脾腫を来たす。

検査所見

  • 白血球増多
    白血球数が著明に増加し、分画は各成熟段階を示す様々な白血球が存在する。なかでも好酸球、特に好塩基球が早期から増加する点が特徴的である。
    • 好塩基球増多
  • 好中球アルカリホスファターゼ neutrophil alkaline phosphatase (LAP, NAP) の活性低下
    発作性夜間ヘモグロビン尿症と並んで NAP が減少する数少ない疾患である。類白血病反応や骨髄線維症との鑑別点となる。
  • 血小板増多
    慢性期には血小板増多を示し、急性転化に陥ると血小板減少に転じることが多い。
  • キメラ遺伝子を PCR 法で検出する

病理所見

  • 抹消血にも各分化過程の顆粒球細胞が増加する
  • 顆粒球系の増殖が主体
    特に好塩基球が増大することが確定診断の一助となる。そして好塩基球の増加はヒスタミンの増加をもたらし、胃潰瘍を合併する。また好酸球も増加している。
  • 血小板の増加

治療

慢性白血病は分裂能が急性白血病ほど速くないので、抗癌剤の多剤併用療法は無効であり、根治を期待できる唯一の方法は骨髄移植である。したがって移植可能な例に対しては骨髄移植が第 1 選択となる。

  • 化学療法
    • インターフェロンα療法
      フィラデルフィア染色体をもつ細胞を減少させる効果をもつ。ただし急性転化を阻止するほどの効果はない。
    • bcr-abl チロシンキナーゼ阻害剤
      腫瘍細胞の bcr-abl チロシンキナーゼに選択的に作用して副作用も極めて少ない。
    • ヒドロキシウレア
    • VP 療法
      ビンクリスチンと副腎皮質ステロイド剤の併用療法であり、lymphoid crisis が主な適応となる。
  • 骨髄移植
    55 歳以下の慢性期の患者に対しては 7 割程度が完治するので、第 1 選択となる。
    • 同胞間同種骨髄移植
    • 非血縁者間同種骨髄移植
      治療成績は同胞間骨髄移植よりも劣る。

21.2 慢性リンパ性白血病 chronic lymphocytic leukemia, CLL

典拠:病態生理できった内科学:血液疾患 2 版 [47, p.140] ,
典拠:Beck: Hematology [1, p.414] ,
典拠:組織病理アトラス [71, p.444] ,
典拠:最新内科学大系:白血病 [34, p.158] ,
典拠:エッセンシャル血液病学 5 版 [54, p.147] ,
典拠:医学生・研修医のための血液病学 [45, p.109] ,
典拠: 三輪 - 血液病学 2版 [50, p.1065] ,
典拠: 血液細胞アトラス 4 版 [65, p.192]

概念

  • 広義
    成熟したリンパ球細胞の形態を示す白血病細胞がモノクローナルに増殖する疾患である。
  • 狭義
    成熟した B 細胞が増殖する。

欧米ではもっとも頻度が高いが、日本では少ない。遺伝子的因子が強いと考えられている。

特徴

  • 壮年に多く、若年は極めて稀である 小児には生じないとされている。
  • 放射線被爆とは無関係な、唯一の白血病

分類

  • 慢性リンパ性白血病の FAB 分類
    • B 細胞性
      • B-CLL
        小細胞性リンパ腫が白血病化したものをいい、CLL の大部分を占める。B リンパ球に特徴的な表面抗原に加えて、本来 T リンパ球に発現されている CD5 も陽性となる。
      • 有毛細胞白血病 hairy cell leukemia, HCL B 細胞由来の慢性リンパ性白血病で、脾腫と汎血球減少を特徴とする。
      • PLL,prolymphocytic leukemia
    • T 細胞性
      • 大顆粒リンパ球性白血病 large granular lymphotic leukemia, LGLL
        旧名 T-CLL である。
      • 成人T細胞白血病 ATLL
      • 皮膚T細胞性リンパ腫, セザリー症候群
  • Rye の病期分類
    • 0 期:リンパ球増加
    • I 期:リンパ球増加+リンパ節腫脹
    • II 期:リンパ球増加+肝腫大もしくは脾腫
    • III 期:リンパ球増加+貧血
    • IV 期:リンパ球増加+血小板減少

病態生理

  • 低γグロブリン血症
  • 細胞性免疫の低下

症状

  • リンパ節腫脹・脾腫
  • 肝腫大
  • 貧血

検査所見

  • 細胞マーカー
    B-CLL-では B 細胞の CD19 および CD20 の表面抗原が陽性となるが、T リンパ球に発現されている CD5 も陽性となる。
  • 骨髄穿刺
    比較的成熟した小リンパ球様の CLL 細胞が増生する。
  • 表面免疫グロブリンがモノクローナルである
    免疫グロブリンの軽鎖の構成比率がκもしくはλに偏っている。
  • 遺伝子検査
    特定の再構成 rearrangement が増加していることが証明される。

病理所見

  • 比較的成熟したリンパ球が増生する
  • 軽度の異型を示す
  • 細胞質の明らかな小リンパ球様細胞の増殖

治療

無症状の症例では経過観察が多く、骨髄機能不全や臓器圧迫症状を呈して 治療を開始する。

  • シクロホスファミド cyclophosphamide (商品名 エンドキサン)
    肝臓で代謝されて phosphamide mustard と acrolein に転じて活性を獲得する。副作用として出血性膀胱炎を生じる。

21.2.1 B 細胞性慢性リンパ性白血病 B-CLL

典拠:エッセンシャル血液病学 5 版 [54, p.147] ,
典拠:Williams Hematology.5ed [6, p.1017] ,
典拠:三輪 - 血液病学 2版 [50, p.1065]

概念

小細胞性リンパ腫が白血病化したものをいい、CLL の大部分を占める。B リンパ球に特徴的な表面抗原に加えて、本来 T リンパ球に発現されている CD5 も陽性となる。

症状

慢性の経過を辿る白血病であり、自覚症状は軽微なことが多い。

  • リンパ節腫脹

検査所見

  • リンパ球増加
    末梢血ならびに骨髄においてリンパ球が著明に増加し、末梢血では 15000[個/μl] 以上、骨髄では 30% 以上となる。
  • 細胞マーカー
    B 細胞の CD19 および CD20 の表面抗原が陽性となるが、本来 T リンパ球に発現されているはずも CD5 も陽性となる。
  • 染色体異常
  • 低γグロブリン血症
  • 自己抗体

合併症

  • 悪性腫瘍

21.2.2 有毛細胞白血病 hairy cell leukemia, HCL

典拠:Beck: Hematology [1, p.415] ,
典拠:組織病理アトラス [71, p.479] ,
典拠:最新内科学大系:白血病 [34, p.183] ,
典拠:エッセンシャル血液病学 5 版 [54, p.150] ,
典拠:血液細胞アトラス 4 版 [65, p.221]

概念

慢性リンパ性白血病の類縁疾患であり、腫瘍細胞は後期成熟 B 細胞に由来する。本症はインターフェロンがかなり有効である。

症状

  • 巨大脾腫

検査所見

  • 汎血球減少
  • TRAP 反応陽性
  • 骨髄穿刺
    dry tap を呈する。

病理所見

毛髪状の細胞突起を持った白血病細胞 hairy cell が出現する。

治療

  • 摘脾
  • インターフェロンα療法

21.2. 慢性リンパ性白血病 CHRONIC LYMPHOCYTIC LEUKEMIA, CLL123

21.2.3 成人T細胞白血病 adult T-cell leukemia, ATL

典拠:Basic Science Oncology.3ed [22, p.89] ,
典拠:組織病理アトラス [71, p.439] ,
典拠:標準小児科学 3 版 [60, p.302] ,
典拠:NIM 血液病学 4 版 [48, p.227] ,
典拠:エッセンシャル血液病学 5 版 [54, p.92] ,
典拠:医学生・研修医のための血液病学 [45, p.111] ,
典拠:三輪 - 血液病学 2版 [50, p.1081] ,
典拠:戸田新細菌学 [68, p.734] ,
典拠:最新内科学大系:白血病 [34, p.168] ,
典拠:血液内科学 1 版 [59, p.278]

概念

HTLV-1 の感染により引き起こされる T 細胞の白血病・リンパ腫をいう。 CD4+CD8-の T 細胞が腫瘍化して増殖する。この点は皮膚T細胞性リンパ腫と同じ。

ATL の病型

予後の悪い順序に列挙すると、

  • 急性型
    高カルシウム血症・リンパ節腫脹・肝腫大・脾腫など多彩な臨床症状 を呈し、抹消血には ATL 細胞が多数出現する。VEPA などの多剤併用療法が施されるが、免疫能の低下に伴う日和見感染と高カルシウム血症によって 1 年以内に死亡することが多い。
    • 急性転化
      くすぶり型や慢性型から急激に悪化していくもの。
  • リンパ腫型
    リンパ節腫脹が前景に立つ非白血病性。すなわち悪性リンパ腫の中で HTLV-1 が関与するもの。VEPA や VP16 の多剤併用療法が施されるが、予後不良。
  • 慢性型
    T 細胞性の慢性リンパ性白血球のなかで HTLV-1 が関与するもの。無治療で自然軽快することもあるが、まれに急性転化を生じる。
  • くすぶり型
    ATL 細胞が増殖をはじめており、抹消血に異常細胞が少数見られるも のの長い臨床経過をとる。無治療で自然軽快することもあり、もっとも予後がよい。

病態生理

  • HTLV-1 の感染機序
    HTLV-1 はレトロウイルスであり、CD4+T 細胞に感染し逆転写酵素によって宿主 DNA に自身の遺伝子を組み込む。組み込まれた遺伝子 の一つである p40-tax は感染 T 細胞に IL-2 とそのレセプターを発現させる。そもそも IL-2 は活性化 CD8+T 細胞から分泌され、T 細胞を増殖させる作用をもつため、感染 T 細胞は不死化する。
    • 血液や母乳などの細胞成分に移入によって感染する。
      感染経路としてもっぱら問題になるのは母乳による母子感染である。しかも感染はウイルス感染細胞が直接宿主細胞に接触して成立することがほとんどで、遊離のウイルスのみで感染することはほとんどない。
  • promoter insertion 機構は否定的である
    ウイルス遺伝子の組み込みによって宿主細胞の癌遺伝子が活性化され るとする promoter insertion 機構は現在のところ、否定的である。

症状

  • 日和見感染
    カリニ肺炎や細菌性肺炎に罹患しやすい。
  • リンパ節腫脹
  • 脾腫
  • 皮膚症状 掻痒感を伴なわない紅斑を呈する。

検査所見

形態学的特徴および免疫マーカーがセザリー症候群と類似するが、HTLV-1 を検出することで鑑別できる。

  • 高カルシウム血症 hypercalcemia
    腫瘍細胞から分泌される副甲状腺ホルモン関連タンパク PTHrP や IL-1 が原因である。急性出血性膵炎を招いて死ぬこともある。
  • HTLV-1 抗体陽性
  • 表面マーカー検査
    CD4+, CD8-であり、特に CD25 陽性が本症に特徴的である。
    • CD4/CD8 比が上昇する
  • 遺伝子検査
    モノクローナルバンドの検出によって、HTLV-1 プロウイルス DNA がモノクローナルに組み込まれているのを証明することで確定診断となる。
  • LDH 高値

病理所見

抹消血に多型性の白血病細胞 flower cell が出現する。

治療

病型によって治療が大きく異なる。慢性型およびくすぶり型は経過観察にとどまる。急性型およびリンパ腫型に対しては強力な多剤併用療法を施行するが、治療に抵抗し発症から 2 年ほどで死亡する。

  • CHOP 療法
  • mLSG 療法
  • IL-2 トキシン療法
  • インターフェロンの多剤併用療法
    インターフェロンと bestarbucil との併用療法により、比較的高い部分寛解率が得られている。
  • 抗癌剤 MST-16
    抗がん剤 MST-16 も単独療法にて、完全寛解を含む 40% 強の寛解率が得られた。
  • ADA 阻害剤
  • トポイソメラーゼ II 阻害剤
  • 抗 CD25 抗体結合リボゾーム

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