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medical praxis - web版 医学ノート - 国家試験対策

学問の上で大いに忌むべきは、したり止めたりである。したり止めたりであれば、ついに成就することはない。

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血液学 31 形質細胞の異常

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→ 血液学 目次

Chapter 31 形質細胞の異常

M タンパク血症

M タンパク M-protein とは尿中あるいは血中に出現する単クローン性免疫グロブリンを意味する。単クローン性 IgG, IgA, IgM, IgD, IgE のほか、単クローン性 L鎖 (Bence-Jones タンパク), 単クローン性 H鎖などをさす。

  • 形質細胞の単クローン性増殖によるもの
    • 多発性骨髄腫
    • 良性単クローン性γグロブリン血症 BMG
  • B 細胞の単クローン性増殖によるもの
    • 原発性マクログロブリン血症

31.1 良性単クローン性γグロブリン血症 benign monoclonal gammopathy,monoclonal gammopathy of undetermined significance, BMG, MGUS

典拠: エッセンシャル血液病学 5 版 [54, p.193]

概念

腎障害・骨病変・タンパク尿などの臨床症状を伴わない単クローン性γグロブリン血症である。

検査所見

多発性骨髄腫と比較して正常免疫グロブリンの減少がなく、Bence-Jones タンパクを認めない点が鑑別上重要である。

治療

一部が多発性骨髄腫に移行するため、定期的な経過観察が必要となる。

31.2 多発性骨髄腫,形質細胞腫 multiple myeloma, plasma cell myeloma, MM

典拠:Essentials of Radiologic Imaging.7ed [11, p.158] ,
典拠:骨軟部疾患の画像診断 1 版 [56, p.242] ,
典拠:Beck:Hematology [1, p.475] ,
典拠:組織病理アトラス [71, p.427] ,
典拠:ConcisePathology [13, p.462] ,
典拠:NIM腎臓病学 3 版 [49, p.175] ,
典拠:エッセンシャル血液病学 5 版 [54, 193] ,
典拠:医学生・研修医のための血液病学 [45, p.141] ,
典拠:病理学 [42, p.473] ,
典拠:NIM 血液病学 4 版 [48, p.204] ,
典拠:血液内科学 1 版 [59, p.324] ,
典拠:ClinicalHematology.2ed [24, p.504] ,
典拠:最新内科学大全:血液・造血器疾患 [39, p.279] ,
典拠:三輪 - 血液病学 2版 [50, p.1095] ,
典拠:Williams Hematology.5ed [6, p.1109]

概念

骨髄腫とは、形質細胞が単クローン性に増殖する腫瘍性疾患であり、単一の免疫グロブリンをモノクローナルに産生し分泌する。B細胞が分化の最終段階で腫瘍化したもので、骨髄内に限局しながらも多発するために多発性骨髄腫と命名された。
好発年齢は高齢者であり、慢性に経過するものから腎不全によって急性に死に至る症例まで臨床経過が症例ごとに多彩である。

分類

  • タンパク型分類
    • IgG 型
    • IgA 型
    • IgD 型
    • IgE 型
    • Bence Jones タンパク型
  • 臨床病期分類
    • stage I
    • stage II
    • stage III

病因

転写因子 BSAP をコードする Pax-5 遺伝子の変異が発症に関係していると考えられているが、このほかにも多数の因子が関与すると言われる。原爆被爆者の追跡調査から、放射線被爆後に数十年を経て本症を発症する頻度が高いことが判明している。
なお IL-6 は本症において腫瘍細胞を増殖させる作用を持つ。

病態生理

  • 腫瘍細胞の増殖に伴う病態
    • 骨病変
      腫瘍細胞から遊離される物質 (破骨細胞刺激因子 OAF) が破骨細胞を活性化することによって全身的な骨の融解が起こる。腫瘍細胞が存在する赤色髄に生じる。
    • 汎血球減少
      骨髄腫細胞の増殖が他の造血を抑制するため。
      • 赤血球減少による貧血
      • 血小板減少による出血傾向
      • 白血球減少による易感染傾向
  • M タンパクによる臓器障害
    骨髄腫細胞は M タンパク (単一の免疫グロブリンまたはその軽鎖である Bence Jones タンパク) を産生して種々の臓器に障害をもたらす。
    • Bence Jones タンパク
      骨髄腫患者の尿中に排泄される異常タンパクで、免疫グロブリン の L 鎖が遊離したもの。もっぱら L 鎖のみが産生される骨髄腫を Bence Jones 型という。Jones タンパクは尿細管を損傷して骨髄腫腎を招くほか、他臓器に沈着して AL 型アミロイドーシスを生じる。
      • AL アミロイドーシス
        Jones タンパクが腎臓に沈着すると腎アミロイドーシスとなり、肝臓に沈着すると肝腫大を呈する。ほかにも舌炎の疼痛、皮疹、心機能低下をもたらす。
    • POEMS 症候群 Crow-Fukase syndrome
      多彩な全身症候と免疫グロブリン異常を伴う多発神経炎である。
    • 過粘稠度症候群
      M タンパクによって血液の粘性が増加し、これによって細小血管の循環障害を来たす。
    • 尿タンパク
      M タンパクは分子量が大きいため腎障害を来たして初めて尿中に漏出する。やがて慢性腎不全に発展する。
    • 凝固障害
      M タンパクは凝固因子を障害する作用を持つ。
  • 血清β2-ミクログロブリンの増加
    M タンパクではないが腫瘍細胞から産生されて血中で増加を示し、腎障害があると尿中に漏出する。

症状

骨病変による疼痛を初発症状とし、これに加えて貧血による全身倦怠感が主要な症状となる。

  • 病的骨折が特徴的である
    本症を特徴づける病変であり、また患者の日常動作能力を左右する。
  • 貧血はほぼ必発である
  • spine knock pain

検査所見

  • 血清タンパク
    • A/G 比減少
    • 電気泳動
      ほとんどの症例にて単クローン性の高γグロブリン血症が証明される。
    • 血清β2-ミクログロブリン (β2M) が増加する
      増加したβ2M は尿中に漏出し、腎障害の指標となる。
  • タンパク尿
    尿中に単クローン性の L鎖タンパクが検出される。ただし試験紙法では見逃されてしまうので要注意である。
  • 赤沈亢進
    Mタンパクおよび貧血のため赤沈は著明に亢進する。
  • 画像検査
    • 単純写真所見
      骨質破壊による打ち抜き像 punched out が見られる。好発部位は 頭蓋骨・骨盤骨・上腕骨・大腿骨・肋骨である。
    • 骨シンチグラフィ
      転移性骨腫瘍ほどには検査の感度がよくない。
    • MRI 所見
  • 高カルシウム血症
    骨融解とPTHrP 産生による溶骨に起因する。
  • 表面マーカー
    成熟した正常な B細胞表面に見られる CD19 が腫瘍細胞では多くの場合に陰性となり、かわって CD38 や CALLA(CD10) が発現している。
  • 骨髄穿刺
    形質細胞の増加が見られ、確定診断となる。
  • ALP 高値
    肝アミロイドーシスの合併を強く示唆する。

病理所見

  • 抹消血標本
    • 赤血球の連銭形成 roueaux formation
      高γグロブリン血症によって血液の粘性が増大するからであり、本症に特異的ではない。
    • 悪性形質細胞の出現
      ただし腫瘍細胞と正常の形質細胞を形態から区別することはできない。
  • 骨髄標本
    形質細胞の増加が見られる。形質細胞は、青っぽい細胞質に核の遍在と核周明庭が見られるのが特徴である。細胞質が青っぽいのはリボゾームに富んでタンパク合成が盛んなことを意味し、核周明庭はゴルジ装置の発達を意味する。いずれも免疫グロブリンというタンパクの産生が亢進していることを示唆する。

治療

予後不良であり、危険な免疫抑制を行うため、治療には検討を要する。治 療の目的は治癒よりもむしろ寛解導入である。なおβ2-ミクログロブリン が予後因子としてもっとも重要であると言われている。

  • 化学療法
    本症の腫瘍細胞は細胞周期が長いため、化学療法は奏功しにくい。
    • MP 療法
      melphalan と predonisolone による二剤併用療法である。
    • VAD 療法
      vincristine, adriamycin, dexamethazone による三剤併用療法である。
    • インターフェロンα
      特に IgA 型に有効性が高いと言われている。
  • 血漿交換療法
  • 放射線治療
  • 骨髄移植
    多くの症例は高齢者であり、また骨髄腫細胞を根絶することが困難なことから、その成績は必ずしも良好ではない。

31.2.1 POEMS 症候群 polyneuropathy organomegaly endocrinopathy M protein and skin chagens,CrowFukase syndrome

典拠:ClinicalNeurology [14, p.215] ,
典拠:皮膚科学 6 版 [57, p.488] ,
典拠:最新内科学大全:皮膚の疾患 [37, p.51]

概念

多彩な全身症候と免疫グロブリン異常を伴う多発神経炎の症例につけられた名称である。

病因

おそらく形質細胞腫 (多発性骨髄腫) から産生される M タンパクのλ鎖が全身の臓器および組織に障害を与えるのではないかと考えられている。

症状

  • 皮膚症状
    • 老人性血管腫瘍病変
    • 色素沈着
    • 多毛
  • 多発神経炎
    運動障害が感覚障害より強く、症状は下肢末梢から始まり,次第に上行する。
  • 肝脾腫

検査所見

  • M タンパク血症
  • IL-6 増加
    IL-6 は in vitro では骨髄腫細胞を増殖させる作用があり、多発性骨髄腫の病因に関係していると考えられている。
  • 単純写真所見
    骨髄腫の所見を認める。なお単純写真と比べて骨シンチでは集積に乏しいのも特徴である。
    • リング状の辺縁硬化を伴なう溶骨性変化
  • 骨髄所見
    形質細胞の軽度増加が認められる。

治療

基本的には骨髄腫に対する治療を行なう。

31.3 原発性マクログロブリン血症 primary macroglobulinemia

典拠:病態生理できった内科学:血液疾患 2 版 [47, p.152] ,
典拠:Beck:Hematology [1, p.480] ,
典拠:三輪 - 血液病学 2版 [50, p.1109] ,
典拠:エッセンシャル血液病学 5版 [54, p.198] ,
典拠:医学生・研修医のための血液病学 [45, p.151] ,
典拠:最新内科学大全:リンパ系疾患 [33, p.225] ,
典拠:血液細胞アトラス 4 版 [65, p.251]

概念

B 細胞が形質様細胞まで分化した段階で腫瘍化したものであり、IgM の M タンパクを単クローン性に産生して過粘稠症候群を呈する。 多発性骨髄腫および慢性リンパ性白血病と臨床的に類似する。本症は骨髄のみならずリンパ組織でも増殖する点が多発性骨髄腫との比較において特徴的である。

病態生理

  • 過粘稠症候群 hyperviscosity syndrome 本症では 5量体である IgM が増加するので、多発性骨髄腫よりもさ らに血液の粘稠度が高くなる。
    • fundus paraproteinemia
  • 免疫不全

症状

無症状のまま検診等において IgM 高値で発見されることも少なくない。

  • リンパ節腫大
  • 肝脾腫
  • 視力障害
    過粘稠症候群による眼底出血や網膜静脈の拡張に起因する。
  • 出血傾向
    高 IgM によって凝固因子の活性が阻害される。
  • 神経症状
    • 精神症状
      頭痛・めまい・意識障害・痙攣発作などを生じる。
    • 末梢神経障害

検査所見

  • IgM 高値
  • 骨髄穿刺
    単クローン性 B細胞の増加が見られ、表面マーカーはマントル層 B細胞由来であり、Ig の L鎖はκあるいはλのいずれかを発現している。

病理所見

  • 末梢血所見
    過粘稠症候群による赤血球連銭形成を呈する。
  • 骨髄所見
    リンパ球類似の異常細胞が増殖する。

治療

多発性骨髄腫に準じる。

  • 化学療法
  • 血漿交換
    過粘稠症候群に対する緊急治療である。

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