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medical praxis - web版 医学ノート - 国家試験対策

学問の上で大いに忌むべきは、したり止めたりである。したり止めたりであれば、ついに成就することはない。

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血液学 32 リンパ球の疾患

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→ 血液学 目次

Chapter 32 リンパ球の疾患

典拠:Beck:Hematology [1, p.385]

32.1 伝染性単核球症,伝染性単核細胞症 infectious mononucleosis, IM

典拠:Essentials Of Pediatrics. 3ed [23, p.389] ,
典拠:Beck:Hematology [1, p.385] ,
典拠:Concise Pathology [13, p.437] ,
典拠:標準小児科学 3 版 [60, p.298] ,
典拠:エッセンシャル血液病学 5 版 [54, p.165] ,
典拠:医学生・研修医のための血液病学 [45, p.127] ,
典拠:三輪 - 血液病学 2版 [50, p.864] ,
典拠:NIM 血液病学 4 版 [48, p.232] ,
典拠:感染症病理アトラス 1 版 [64, p.156] ,
典拠: 血液細胞アトラス 4 版 [65, p.181]

概念

思春期から青年期にかけて EB ウイルスに初感染することによって発症する良性リンパ節疾患である。臨床症状が急性リンパ性白血病・悪性リンパ 腫・成人型 Still 病に類似するため、鑑別を要する。

病因

へルペスウイルス属の EB ウイルスの初感染が原因である。一般的な感染 経路は飛沫感染や接触感染であり、しばしば接吻の際に唾液を介して感染する。
なおサイトメガロウイルス、トキソプラズマ、リケッチアなどの感染でも本症に似た症状を呈するので鑑別が必要となる。

病態生理

EBウイルスは気道粘膜で増殖し、B細胞に感染してその増殖を促進する。

  • 細胞性免疫の発動
    EB ウイルスは Bリンパ球に感染する。感染 B細胞は細胞膜上にウイルス抗原を表出させ、その抗原を CD8+T 細胞に抗原提示する。活性化された CD8+T 細胞は感染 B細胞を排除するために CTL へと分化を遂げて増殖する。
  • 異種親和性抗体 heterophile antibody
    EBV は Bリンパ球をポリクローナルに活性化させて種々の異種親和性抗体を産生させる。

症状

1ヶ月程度の潜伏期間ののちに、発熱やリンパ節腫脹で発症する。

  • 上気道炎
    咽頭痛、扁桃の腫大を来たす。扁桃にはジフテリア様の白苔をつけることがある。
  • 有痛性の頸部リンパ節腫脹
    圧痛はあるが自発痛ではない。
  • 肝脾腫
  • 発疹
    多彩であって風疹や薬疹との鑑別が困難である。

検査所見

  • 白血球増多
    • リンパ球増多症
      特に CD8+T 細胞の異型リンパ球が出現する。ただし異型リンパ球自体は本症に特異的ではなく、サイトメガロウイルス感染や風疹などのウイルス感染症でも出現する。
  • 肝機能障害
  • 抗 EB ウイルス抗体 heterophile antibody
    VCA-IgM, IgG, EBNA, EBDR などの抗体価が上昇する。初感染を証明するために IgG ではなく IgM抗体を検出することが重要であるのは言うまでもない。
    • 抗 EA 抗体
    • VCA-IgM
  • 寒冷凝集素の上昇
    おそらくウイルスによるリンパ球の活性化が原因であろうと考えられている。
  • Paul-Bunnel 反応陽性
    異種赤血球を凝集する抗体 (異好抗体) を検出する。ただし日本では陰性となる症例が比較的多い。
  • 末梢血所見
    広く青い細胞質に核小体が明瞭で粗い感じのある核を持った異型リンパ球が多数出現する。

臨床症状は ALL と似るが、汎血球減少がない点が鑑別に有効である。

合併症

  • 血球貪食症候群

治療

無治療でも自然軽快するので経過観察となることも多い。

  • 抗炎鎮痛剤などの対症療法のみ
    免疫系が非常に亢進されており、アンピシリンなどを投与すると容易に薬剤性発疹 ampicillin rash を生じるので抗生物質投与は禁忌である。
  • 血漿交換療法

32.2 クリオグロブリン血症 cryogloblinemia

典拠:Beck:Hematology [1, p.474] ,
典拠: 三輪 - 血液病学 2版 [50, p.895] ,
典拠:NEW皮膚科学 1 版 [70, p.350] ,
典拠: Dermatology General Medicine. 4ed [16, p.2024]

概念

クリオグロブリンとは 5 度に冷却すると白色沈殿として出現する免疫グロブリン分画の一つで、IgG と IgM に属するγグロブリンである。臨床的にはレイノー現象および紫斑の原因となる。

分類

  • 本態性
  • 症候性
    多発性骨髄腫・慢性肝疾患・感染症などに続発するものをいう。近年になって HCV 感染症が重視されている。

症状

  • クリオグロブリン血症性紫斑
    寒冷暴露時の紫斑およびリベドを生じる。
  • レイノー現象
  • 関節炎

検査所見

  • 寒冷沈降
    血清を冷却すると白色沈殿を生じる。
  • 赤沈と CRP の解離
    赤沈は遅延するが CRP は偽陽性を示す。

32.3 acute infectious lymphocytosis

典拠:Beck: Hematology [1, p.386]

32.4 Wiskott-Aldrich症候群 Wiskott-Aldrich syndrome, WAS

典拠:Essentials Of Pediatrics.3ed [23, p.275] ,
典拠:標準小児科学 3 版 [60, p.266] ,
典拠:病態生理できった小児科学 [41, p.55] ,
典拠:Immunobiology.3ed [31, 10:18] ,
典拠:最新内科学大全:自己免疫疾患と免疫不全 [36, p.266] ,
典拠:三輪 - 血液病学 2版 [50, p.1200] ,
典拠:エッセンシャル血液病学 5 版 [54, p.208]

概念

血小板減少・湿疹・易感染性を三徴とする免疫不全症で、X 連鎖性劣性遺伝病である。悪性腫瘍 (特に血液悪性腫瘍) の合併頻度が極めて高い。

病態生理

WAS 遺伝子の異常が見つかっている。WAS タンパクは膜糖タンパクのひとつである CD43 の調節に関与していると考えられている。CD43 は ICAM-1 のリガンドのひとつであり、抗原提示細胞との接着に必要とされる。したがって、この分子の異常によって T 細胞の機能異常が生じると推測されている。

  • 免疫不全
    • Tリンパ球機能異常
      細胞性免疫が低下し、カリニ肺炎やウイルス感染などを生じやすくなる。
    • 抗体産生不良
  • 出血傾向
    血小板減少に起因し、乳児期の主要な死因となる。

症状

  • 血小板減少による出血傾向
  • 湿疹
    乳児期にアトピー性皮膚炎が顕著となる。
  • 易感染性
    乳児期より感染を繰り返し、幼児期にはカリニ肺炎やヘルペスなどの日和見感染を生じる。

検査所見

  • 小型血小板減少
  • 免疫グロブリンの量的異常
    IgA および IgE が高値で IgM が低値という特異なパターンをとる。
  • 遺伝子検査
    WAS 遺伝子の異常を検出し、確定診断となす。

合併症

悪性腫瘍 (特に血液悪性腫瘍) の合併頻度が極めて高い。

治療

根治的治療は骨髄移植のみである。骨髄移植がなされないと多くは 3 歳までに出血と感染症で死亡する。


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