読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

medical praxis - web版 医学ノート - 国家試験対策

学問の上で大いに忌むべきは、したり止めたりである。したり止めたりであれば、ついに成就することはない。

スポンサードリンク

血液学 41 造血幹細胞移植 hematopoietic stem cell transplantation

血液学 血液学-11.血液疾患の治療
スポンサードリンク

→ 血液学 目次

Chapter 41 造血幹細胞移植 hematopoietic stem cell transplantation

典拠: 血液内科学 1 版 [59, p.109]

概念

造血幹細胞移植は主に二つの目的を持つ。一つは骨髄組織の根本的置換を 行なうことで造血系や免疫系に異常を来たす疾患を直接治癒することであり、もう一つは造血系の悪性腫瘍に対する大量の化学療法あるいは放射線 療法の際に正常の免疫系を回復させるために行なう。

分類

  • ドナーによる分類
    • 同種移植
    • 同系移植
    • 自家移植
  • 幹細胞の採取法による分類
    • 骨髄移植
    • 抹消血幹細胞移植 peripheral blood stem cell transplantation
    • 臍帯血幹細胞移植 cord blood stem cell transplantation
      分娩後の胎盤・臍帯の血管から血液を採取する。

適応

  • 血液幹細胞の障害や量的低下をきたした疾患
    重症度再生不良性貧血、AML, ALL, CML、骨髄異形成症候 (RA)、多 発性骨髄腫など。
  • 超大量抗癌療法によって治癒が期待できる疾患において、抗癌療法後に骨髄を再建する 造血器悪性腫瘍や神経芽細胞腫など。

41.1 骨髄移植 bone marrow transplantation, BMT

典拠:標準外科学 8 版 [72, p.245] ,
典拠:血液病学 [51, p.515] ,
典拠:WilliamsHema- tology.5ed [6, p.172]

概念

骨髄移植とは、「機能不全に陥っている細胞を事前に破壊した後、骨髄由来の正常な造血幹細胞を静脈内に投与することによって骨髄の再構築をはかる治療法」である。

造血幹細胞移植の種類

  • 同種骨髄移植 allogenic BMT
    ヒト組織適合抗原 (HLA) が適合した、同胞や血縁者 (genotypic identical), または非血縁者 (phenotypic identical) からの骨髄幹細胞の移植。
    • genotypic identical
    • phenotypic identical
      抗体で調べた限りでは同種であるが、すべての遺伝子が同一であ るとは断言できない点に注意。
  • 自家骨髄移植 autologous BMT
    白血病細胞を一掃した自己組織の骨髄を移植する方法。GVHD の恐れはないが、移植片に増殖能を持った白血病細胞がいまだ混入している危険がある。
  • 同系骨髄移植 syngenetic-BMT
    一卵性双生児間の骨髄移植。
  • 抹消血幹細胞移植 PBSCT

骨髄移植の適応

骨髄移植とは造血幹細胞の移植であるから、適応は造血幹細胞あるいは分化した血液細胞やリンパ系細胞の異常に基づく難治性疾患である。

  • 絶対適応
    再生不良性貧血、AML,ALL,CML
  • 相対適応 I
    非ホジキン病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫など。
  • 相対適応 II

合併症

GVHD, 間質性肺炎、肝中心静脈閉塞症などが合併する。

41.1.1 同種骨髄移植 allogeneic marrow transplantation

典拠: Williams Hematology.5ed [6, p.172]

特徴

  • HLA 一致が原則
  • 赤血球 ABO 型の適合は要求されない
  • GVHD が合併する
    白血病では GVL としてむしろ白血病の治癒に貢献することがある。

手順

  1. 前処置 conditioning
    拒絶を予防するためにレシピエントの免疫系を強く抑制しておく。このために 2Gy の放射線全身照射ならびに強力な化学療法を行なう。
  2. 後処置 posttransplantation supportive care
    G-CSF 等のサイトカインを用いて幹細胞を増加させることで、移植後の白血球減少期間を短縮できる。

41.1.2 移植片対宿主病 graft-versus-host disease, GVHD

典拠:Immunobiology.3ed [31, 10:22] ,
典拠:三輪 - 血液病学 2版 [50, p.515] ,
典拠:エッセンシャル血液病学 5 版 [54, p.91]

概念

ドナー側の組織に残存しているドナーのリンパ球が組織適合性の不一致を認識して、レシピエントの細胞を傷害する。これを移植片対宿主病 GVHD という。なお自家移植では免疫寛容が確立されているため、発症しない。

原因

  • HLA の一方向適合 レシピエントがヘテロ型 (たとえば Aa) でドナーがホモ型 (たとえば AA) の場合にはレシピエント側はドナー細胞は自己と認識するが、ドナー側はレシピエント細胞を異物と認識する。 日本人は HLA の類似性が高いため、ドナーの HLA がたとえば X/X のハプロタイプであり、X/Y のレシピエントに輸血されると、ドナーのリンパ球は排除されずに増殖し、逆に増殖したドナーリンパ球がレシピエントの Y を駆逐する。

病態生理

ドナーのリンパ球は皮膚・肝臓・腸管を主な標的臓器として攻撃し、上皮細胞障害に基づく病態を形成する。 特に小腸リンパ節に富んでいるため小腸移植において発生頻度が高くなる。

症状

  • 急性症状
    ドナーのリンパ球によって皮膚・肝臓・消化管の上皮細胞が障害される。
    • 紅皮症
    • 黄疸
      胆管上皮の壊死によって閉塞性高ビリルビン血症に発展する。
    • 頻回で大量の下痢
      肝不全もしくは循環不全によって死亡することがある。
  • 慢性症状
    3ヶ月以降に自己免疫性疾患に類似した症状を呈する。幹細胞から派生したリンパ球によるものと考えられている
    • 全身性強皮症に似た皮膚硬化症
    • 閉塞性細気管支炎

合併症

  • 造血幹細胞を傷害して再生不良性貧血を合併する
  • graft versus leukemia (GVL) 効果
    全くGVHD を起こさない患者よりも GVHD を起こした患者のほうが白血病の再発が少ない。これは GVHD によってレシピエントに残存する白血病細胞が排除されるから。

治療

予防については、免疫抑制剤シクロスポリン cyclosporin を投与する。発症後の治療にはステロイドを用いる。

41.2 末梢血幹細胞移植 peripheral blood stem cell transplantation, PBSCT

典拠: 病態生理できった内科学:血液疾患 2 版 [47, p.250]

概念

末梢血から採取した幹細胞を移植する新しい移植法である。主に急性白血病の治療に利用される。

分類

  • 自家末梢血幹細胞移植 auto-PBSCT
    適応としては、化学療法や放射線療法に感受性が高い疾患で、かつ自己の幹細胞が残存していることなどがあげられる。GVHD が起こりえないという利点はあるが、これは同時に GVL 効果を期待できないことを意味する。

手順

  • 体外循環によって抹消血中の幹細胞を採集する
  • G-CSF 等のサイトカインを用いて抹消血中に幹細胞を増加させる

↑ トップページ → 血液学 目次