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medical praxis - web版 医学ノート - 国家試験対策

学問の上で大いに忌むべきは、したり止めたりである。したり止めたりであれば、ついに成就することはない。

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血液学 8 ヘモグロビン hemoglobin

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→ 血液学 目次

Chapter 8 ヘモグロビン hemoglobin

典拠:医科生理学展望 [19, p.529] ,
典拠:Harper [27, p.53] ,
典拠:Stryer [30, p.154]

構造

ヘモグロビンは4つのサブユニットより構成される。各ユニットはポリペプチド部であるグロビン globin とそれに結合したヘム heme からなる。ヘムは 2価の鉄原子を含むポルフィリン誘導体である。

  • heme
    ヘムは 2価の鉄原子を含むポルフィリン誘導体 porphyrin である。
  • globin
    ヘモグロビンを脱ヘム化して得られるアポタンパク

種類

  • hemoglobin A (HbA)
    正常な成人のヘモグロビンであり、サブユニット構成は、α 2 β 2。
  • hemoglobin A2 (HbA2)
    正常な成人中に約 2%含まれ、サブユニット構成は、α 2 σ 2。βサラセミアにおいて増加する。
  • 胎児ヘモグロビン hemoglobin F (HbF)
    胎児のヘモグロビンで、サブユニット構成はα 2 γ 2。酸素親和性が高い。正確には BPG に対する親和性が母体血の HbA よりも低いために相対的に酸素親和性が高くなる。妊娠の終わり 3ヶ月においてγ 鎖にかわってβ鎖が合成されるようになる。なおβサラセミアや鎌状貧血では生後もγ鎖の合成が継続する。酸素親和性が高いという性質は胎内という低酸素環境では酸素運搬能に関して有利であるが、出生後の好気的環境では酸素との結合能が高 すぎるため、酸素運搬能は減少する。
  • hemoglobin S (HbS) 鎌状ヘモグロビンで、サブユニット構成はα 2S2。

機能

  • 酸素運搬能
    ヘモグロビン Hemoglobin の酸素親和性は次の要因によって影響さ れる。
    • pH
      pH の低下は酸素解離曲線を右にシフトする。すなわち酸性ではヘモグロビンは酸素と結合しにくくなる (ボーア効果 Borh effect)。 これは deoxyHb は oxyHb と比べて H+ と強く結合するからである。
    • 温度上昇は酸素解離曲線を右にシフトする。
      温度が上昇すると代謝が亢進するため、これに応じた酸素供給を確保するという意義を持つ。
    • 2,3-DPG
      2,3-DPG は解糖過程の産物である。3-phosphoglyceraldehyde から生成される。これは deoxyHb と結合するが、oxyHb とは結合しにくいという性質を持つ。
      さらに赤血球内 2,3-DPG がヘモグロビンと結合すると、構造変化を介して酸素親和性を低下させる (酸素飽和曲線の右方シフト)。 この結果、抹消組織への酸素運搬量は増加する。 こうした性質は貧血の代償機構として有効である。すなわち貧血で低酸素になると 2,3-DPG の産生が亢進し、これが抹消の低酸素状態の改善に役立つからである。
  • 二酸化炭素運搬能
  • pH 緩衝能
  • 血液粘性

8.1 酸素解離曲線 oxygen-hemoglobin dissociation curve

典拠:Ganong16 [17, p.604] ,
典拠:標準生理学 4 版 [75, p.591]

概念

組織の酸素分圧とヘモグロビンの酸素飽和度の関係を表した曲線をいう。酸素飽和曲線の右方シフトは酸素親和性の低下を意味し、ヘモグロビンが酸素を離しやすくなるので抹消組織への酸素運搬量は増加する。

8.1.1 ボーア効果 Bohr effect

典拠:Ganong16 [17, p.605] ,
典拠:医科生理学展望 [19, p.660,p.656] ,
典拠:Harper [27, p.59] ,
典拠:標準生理学 4版 [75, p.592]

概念

アシドーシスにて酸素解離曲線が右にシフトし、酸素親和性が低下する生体の代償現象をいう。その意義は抹消組織におけるヘモグロビンの酸素放出促進とデオキシヘモグロビンの緩衝作用である。

機序

デオキシヘモグロビン deoxyHb は オキシヘモグロビン oxyHb と比べて H+ と強く結合する。したがって酸性ではヘモグロビンは酸素と結合しにくくなり、酸素解離曲線は右に偏移する。これをボーア効果 Borh effect という。 その意義は、抹消組織での H+ の上昇を緩衝する点にある。すなわち抹消 組織の内呼吸によって生じた CO2 は炭酸脱水酵素 carbonic anhydrase に よって H2CO3 となる。さらに H2CO3 は酸と共役塩基に解離する。

H2CO3 < − > H+ + HCO-

アシドーシス下ではボーア効果によってデオキシヘモグロビンが生じやす くなるが、この deoxyHb が H+ と強く結合することで、抹消での酸性化を抑制する。

8.2 メトヘモグロビン methemoglobin

典拠:Harper [27, p.737]

概念

ヘモグロビンは容易に酸化されて 3 価の鉄を持つメトヘモグロビンとなる。 これは酸素の運搬能を持たないため生体内ではこの酸化型ヘモグロビンを還元して元の通常ヘモグロビンに戻す系が存在する。

機序

  1. cytochrome b5 を用いて Hb を還元する

Hb − Fe3+ + Cytb5red− > Hb − Fe2+ + Cytb5ox

  1. 酸化された Cyt を NADH を用いて還元する。

Cytb5ox + NADH − > Cytb5red + NAD

このとき NADH は解糖系から供給されるので、この系が働くときは lactate が産生されない。

8.3 ヘモグロビン合成

典拠: エッセンシャル血液病学 5 版 [54, p.42]

8.3.1 ヘム heme

典拠:Harper [27, p.344]

概念

ヘムはポルフィリンに鉄がキレートしたポルフィリン鉄錯塩であり、赤芽球でグロビンと結合してヘモグロビンとなり、肝臓で電子伝達系を構成するチトクロームとなる。

ヘム合成

典拠: Harrison13 [8, p.1718]

ヘムの合成過程

ヘムは肝臓において succinyl-CoA と glycine を材料として合成される。

  1. 細胞質にて
    uroporphyrinogen III を coproporphyrinogen III へ
  2. ミトコンドリアにて
    (a) coproporphyrinogen III を protoporphyrinogen IIII へ
    (b) protoporphyrinogen III を protoporphyrin III へ
    (c) 鉄イオン Fe++ が ferrochelatase の働きによって protoporphyrin とキレートを形成し, ヘムとなる
    したがって鉄欠乏性貧血や鉛中毒においては赤血球中の protopor- phyrin が上昇する。

ヘム合成に関する疾病

  • 鉛中毒 lead poisoning
    鉛は次の 2 個所の反応を阻害してヘム合成を抑制する。
    • ALA dehydrase
    • ferrochelatase
  • 鉄芽球性貧血 sideroblastic anemia
    ヘム合成障害のため、核周囲のミトコンドリア内に鉄が沈着し、骨髄 鉄染色標本で鉄顆粒が赤芽球の核を環状に取り込んだ環状鉄芽球の増 加が見られる貧血の総称。
  • ポルフィリン症 porphyria
    ヘム合成系に関与する酵素の異常によって、その中間代謝物であるポルフィリン体あるいはポルフィリン前駆体が生体内に蓄積することによって生じる。

ヘム分解

典拠:Harper [27, p.351]

概念

ヘムの分解は肝細胞, 脾臓, 骨髄などの microsomal heme oxygenase systemで行われる。

分解過程

  1. 酸化されて ferric な hemin となる。
  2. ヘミンは NADPH から還元されてヘムに戻る
  3. 酸素によってもう一度酸化されて ferric になる。 同時に水酸基が付加される。
  4. さらに酸素が付加されると同時に ferric ion と一酸化炭素が解離して biliverdin となる。
  5. NADPH によって還元されて bilirubin となる。

ビリルビン bilirubin

典拠:異常値の出るメカニズム 3版 [43, p.174] ,
典拠:Harper [27, p.351]

概念

ヘモグロビン中のヘムが肝臓で分解されて生じる。

分類

  • 直接ビリルビン direct-reacting bilirubin
    血清にメタノールを加えずにジアゾ試薬と直接呈色反応する検出されるビリルビン。極性を持つ抱合型ビリルビンのこと。
  • 間接ビリルビン indirect-reacting bilirubin
    血清にメタノールを加えてはじめて検出されるビリルビン。極性を持たない遊離のビリルビンのこと。

ビリルビン代謝

ヘムの分解によって生じたビリルビンは肝臓で次のような処理を受ける。

  1. 抱合型ビリルビンへの変換
    非極性のビリルビンにグルクロン酸を付加し、極性を付与する。
  2. 胆汁への分泌
  3. 腸内細菌による還元
    腸内細菌によって抱合型ビリルビンはそのグルクロン酸を除去されて, ウロビリノーゲン urobilinogen となる。
  4. ウロビリンへの酸化
    ウロビリノーゲンは酸化されてウロビリン urobilin となる。

8.4 ヘモジデリン hemosiderin

典拠:異常値の出るメカニズム 3版 [43, p.94] ,
典拠:Harper [27, p.712] ,
典拠:病理学 [42, p.58]

概念

ヘモジデリンとは、「主としてヘモグロビンの鉄に由来し、マクロファージに貪食された赤血球やヘモグロビンがリゾソームで分解される過程で生じたもの」。ヘモジデリン鉄は利用されないので、体内の貯蔵鉄量の指標となる。

代謝

遊離ヘモグロビンは腎尿細管で再吸収され、鉄はヘモジデリンとして尿中に排泄される。したがって溶血で遊離ヘモグロビンが増加すると尿ヘモジデリンが陽性となる。


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